第55話 お見舞いに行きます
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<楽園>で暮らすことになったシェリー。しかし、彼女には一つ大きな問題があった。それは癌との闘病している妹のローザだ。彼女は都内の病院に入院しており、これは地上世界の勢力にとっては恰好の人質となり得た。そこで私たちはローザを<楽園>に迎えることにした。
シードルたちに相談すると、彼女たちはユキコンドルの飾り羽を研究して、外套を作ってくれた。それを着れば完全に透明になることができるらしい。しかし、ユキコンドルの飾り羽が生え替わるのは稀なので、外套は二着が限界だった。
私とシェリーさんは外套を纏って、ローザさんがいる病院に行くことにした。外套は本当に私たちを透明にする様で、街を歩いても誰かと目が合うことはなかった。電車が使えないのは不便だけど、今の私たちには十分だ。
シードルは万が一に備えて、シェリーにとある試作品を渡した。それはテューレと魔法のタクトの技術を転用して作ったナイフだ。これは誰でも回数制限無しに二種類だけ魔法を行使できるもので、その強力さから、<楽園>の人間以外には秘匿することになっている。この試作品に設定されているのは癒しの魔法と、銃弾を撃ち出す魔法だ。
一時間半ほど歩くと病院に着いた。真っ暗な夜、面会時間はとっくに終わっている。私たちは外套を着たまま病室に向かう。警備も薄いので、特に誰にも見つからなかった。扉を開けると、そこにはシェリーさんに似た顔の少女がいた。扉をしっかり閉めてから、私たちは外套を脱ぐ。
「ローザ、迎えに来たよ。」
「お姉ちゃん!」
少女がシェリーに抱きつく。
「いい、ローザ。この薬を飲んで。」
「う、うん。」
ローザは瓶を開けて薬を飲み干す。
「痛みが......なくなった!凄いよ、お姉ちゃん!」
「よかった...よかった......」
二人は再び抱き合う。
「ローザ、<楽園>については知ってる?」
「うん、ニュースで見たよ。凄い魔物がいるって。」
「そう。お姉ちゃんはその<楽園>に所属することになったの。ローザも来てくれない?」
「うん。分かった!お姉ちゃんがいるならどこでもいいよ!」
「ありがとう......」
「私は小田原トモ。よろしくね、ローザちゃん!」
「よろしくお願いします、トモさん。」
こうして、私たちはローザの確保に成功した。私たちは病院を脱出しようとするが、外套は二つしかないので、私とローザちゃんが透明化して脱出することになった。
シェリーさんはジャケットの内ポケットから拳銃とサプレッサーを取り出すと、銃口にサプレッサーを取り付ける。更にジャケットの背の裏側から黒い部品を取り出して、ベッドの上に並べる。それらを慣れた手つきで組み立てると、たったの二分でサプレッサー付きの自動小銃が出来上がった。スラックスに通されたベルトを肩から掛けると、袖に隠されていたマガジンを次々にベルトに固定していく。自動小銃を肩にかけたシェリーは最後に靴底からナイフを取り出し、臨戦状態になった。
「この部屋のコンセントには盗聴器がある。恐らく公安部がやってくる。二人は早く逃げて。」
「シェリーは大丈夫なの?」
するとローザが僅かに微笑んでこう言った。
「大丈夫だよ。対人戦ならお姉ちゃんは最強だから。」
警視庁公安部は<仮面の死神>の本当の恐ろしさを知らない。変装の達人シェリーは変装以外の隠密行動が苦手だ。そんな彼女が今まで生きてこれた理由は単純だ。任務における危険分子はことごとく殺害してきたのだ。コンゴの反乱軍からロシアの特殊部隊、中国の秘密警察からアメリカの諜報部隊まで。立ちはだかる者は全て墓の下に送ったか、猛禽類の餌にしてきたのだ。
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