第52話 威風堂々たる楽園の賢者 (2)
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食事を終えた私たち。ヘルメスは遂に宣戦布告にも近しい交渉を始めた。
「ではまず、<楽園の賢者>として、今後予定していることを少し話すことにしよう。まず、我々はアメリカ合衆国政府との取引を目的としている。彼らにエネルギー資源を供給する対価として、我らが主であるトモが世界中のダンジョンに散らばる同胞を保護するのを援助してもらうつもりだ。
その前提として、地上世界から<楽園>に敵対する者と、活動の障害となる者を一掃する必要がある。中華共栄構想や、独裁者の類の様な連中のことだ。よって、我々と友好関係を築くならば、まずは彼らに<楽園>の恩恵を渡さないことが絶対条件となる。」
これに、香港に工場を持ち、中華共栄構想と関係のあるアフマド・サルマンは顔をしかめる。
「ならば、僕はあくまで中立の関係とし、友好関係からは手を引こう。」
「よろしい。では1,000万円は返金する。中立の関係であれば、交渉次第で友好関係を築くことはやぶさかではない。気が変わったらまた連絡していただこう。」
そこで動いたのがリンだ。
「なら彼が貰うはずだったエネルギー資源も相応の対価で買い取りたいです。いくらでしょうか?」
「ライフハウス・コーポレーションとの関係は<楽園>の今後を考える上でも必要不可欠だ。1,000万円で手を打とう。」
「1,000万円、払いましょう。」
「交渉成立だ。」
「次に、中立と友好の定義を定めるとしよう。<楽園>との関係において、中立とは貴殿らが敵対しない限りは我々も敵対しない、それだけの関係だ。友好は我々との取引が可能である状態を指す。何もそれは物資や金だけではない。人や情報、技術も交渉次第で取引しよう。」
ヘルメスの言葉に違を唱える者はいない。
「話を今後のことに戻そう。まず大久保殿と吉田殿。仮に自由党が与党に返り咲くとして、貴殿らはいつ頃動ける?」
これに大久保アキオが答える。
「我々自由党はいつ衆議院が解散してもいい様に万全の体制を整えている。」
「では次にリン殿、台湾迷宮報としては自由党と民意・共栄連立政権、どちらを支持する?」
「民意党も共栄党も中国共産党の息がかかっています。私たちは自由党を支持します。もしそうなれば、私たちは彼らの不正と腐敗を暴露する形で、世論をある程度操作できます。」
「よろしい。では明日、民意・共栄連立政権を崩壊させるとしよう。」
この発言に、その場にいた誰もが耳を疑った。民主主義政権の転覆など、革命か暗殺でもするつもりなのかと緊張が高まる。
「まあ、そんなに警戒せずともよろしい。トモは暴力を好まないので、我々も地上の民主主義という慣習に則るつもりだ。具体的には二つの告発を行う。一つは飛騨ダンジョンでの迷宮庁の暴挙、人の言葉を話す温厚な魔物に騙し討ちをしかけ、彼らの使者を殺害したことだ。
二つ目。こちらがこの告発の主砲なのだが、迷宮庁による研究所<シードル>の不当な身柄の拘束と強制労働を告発する。現在、彼女は我々が保護しているので、世界中のネットワークを掌握し、本人による告発動画を公開する。そして<楽園>の存在と目的も世界に公布することになるだろう。」
この瞬間、自由党の二人はこの会合が全くもって交渉の場ではないことを確信する。これは<楽園の賢者>による世界への宣戦布告の最終確認。出席者はただそれを傍聴することを許された弱者でしかないのだ。
そして、各国が欲する天才研究者シードルが今、<楽園>に所属しているという事実は出席者たちの<楽園>に対する警戒を最大限にまで押し上げた。
「すぐに選挙の準備をしよう。」
大久保アキオは<楽園>への従属を嘔吐した。
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