第44話 二人と一体でお出かけです!!
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キョウコから来た突然の誘い。しばらく魔物としか話してなかった私はウキウキで出かけることにした。
「トモ、久しぶりにお友達と会うのね。」
自室で服を選んでいると、背後からアリスちゃんの声がした。大抵の魔物たちは<楽園>の生活に満足して外に出てくることはないが、アリスちゃんとヘルメスはこうして私の家の中をうろうろすることがある。
「そうだよ。最近は<楽園>にずっといたからね。丁度いいかなって。」
「私も連れて行ってくれない?人間界に興味があるわ。」
「いいよ。」
「あら、反対すると思ったわ。」
「だってアリスちゃんは人型だし、正直私も魔物だとは思えないわ。」
「でも私、本気出せばこの街くらいなら一撃で吹き飛ばせるわよ。」
「この街って調布のこと?」
「いや、東京。」
え...アリスちゃんそんなに強かったんだ...
「で、でもアリスちゃんはや、やらないでしょ...?」
「まあね。トモに何かない限りはやる意味もないもの。」
私はすっかり歩く時限爆弾になった様だ。
キョウコちゃんにもう一人友達を呼んでいいか確認すると、了承してくれた。
私とアリスちゃんはキョウコちゃんとの待ち合わせ場所である渋谷駅のハチ公前に向かった。渋谷駅の改札を出ると、アリスちゃんは文明の利器の数々に驚いていた。
「トモちゃん!久しぶり!」
そこには少しフォーマルな私服でおしゃれしたキョウコちゃんがいた。
「キョウコちゃん、久しぶり〜。」
「突然なのにごめんね。それで、その子がもう一人のお友達?」
白髪の美少女アリスを見たキョウコちゃんは少し不思議そうにアリスちゃんを見つめる。
「そう。アリスちゃんって言うの。」
「初めまして、アリスよ。よろしくね、キョウコちゃん。」
アリスちゃんはすっかり私たちの雰囲気に合わせてくれた。
「何か世界冒険者協会の日本支部長がトモちゃんと話してみたいって言ってて、どう?安全は世界冒険者協会の名にかけて保証するって。」
この前の占いのこともあるし、安全なら確かに私も話してみたい。
「いいんじゃない?面倒になったら私も手伝うわ。」
そう、アリスちゃんが言ってくれる。
「いいよ。私も色々あったしね。」
「支部長は夜の七時に予約したお店に来るみたいだから、それまでどこかで遊ぼう?」
「そうしよう〜!」
私たちの待ち合わせは午後二時。渋谷で五時間も遊ぶのは中々大変で、本屋さんを巡ったり、CDショップに行ったりした。魔物氾濫が起きてから、インターネットの関連施設で自然環境の魔物による被害が世界的に確認された。それ以降、電子書籍や音楽・映画などのサブスクリプションサービスは衰退した。日本では施設はすぐに復旧したが、インターネットへの信頼が崩れ、物質として手に取れる紙書籍やCD、Blue-Rayは再び注目される様になったのだ。
結局私たちは歩いて代々木公園に行って、キッチンカーのケバブを頬張りながらお散歩した。日が長くなったことで夏が近づいていることに気付く。
「久しぶりにトモちゃんと遊ぶと楽しい!」
「私も〜。アリスちゃんはどう?」
「ケバブも美味しいし、街も賑やかで楽しかったよ。トモに本まで買ってもらったしね。」
アリスちゃんは本屋で詩集をずっと眺めていたので、欲しい本を何冊か買ってあげた。日本最古の文学作品である「万葉集」、古典古代文学の集大成である「ギリシア詞華集」、ローマの詩聖ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」、ペルシアの大詩人ウマル・ハイヤームの「ルバイヤート」、ドイツの国民詩人ゲーテの全詩集、アメリカ詩の源泉にして象徴であるウォルト・ホイットマンの「草の葉」とエミリー・ディキンソンの全詩集。とにかく沢山買った。
日本の出版業界は特に古典文学の方面で、無駄な権威にあぐらをかき、再版での延命を続けていて、紙書籍の復権の波にうまく乗れていない。アリスちゃんは中途半端に抄訳されたものには何の価値も感じないらしく、「万葉集」以外は英語の洋書を買うことになった。アリス曰く、人間の言語は言葉と言葉の空間にも意味があり、それを恣意的に破壊することは文学への冒涜であるのだとか。
もちろん、魔物の文人が生まれたら面白いという理由もあるが、かわいいアリスちゃんの上目遣いの前に私の財布は余りに無防備だった。夕焼けを眺めていると、時計は18時10分を示す。
「じゃあトモちゃん、アリスちゃん。そろそろお店行こっか?」
「「は〜い!」」
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