第39話 新たなプレイヤーたち (2)
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アラブ首長国連邦からの長旅も遂に終わり、僕、アフマド・サルマンは東京の夜を初めて目の当たりにした。21歳とは言え、僕は石油企業のCEO。お金には困っていなかった。魔石というエネルギー資源が登場してなお、僕のビジネスが順調なのは僕の企業が開発したとある技術が関係していた。それは魔石を液体に加工するもので、魔石をエネルギー資源として活用するのに欠かせないのだ。
私は中東諸国、フランス、エジプト、インド、香港に工場を持っているが、アメリカは自国で魔石の液体化に成功していた。台湾のライフハウス・コーポレーションも同様の技術を開発し、日本やオーストラリア、イギリス、ドイツなどでのシェアは彼らに先を越されている。
僕が日本に来た理由、それは僕のビジネスでアドバイスをくれる<楽園の賢者>の主人だという<楽園の主>からの一件のEメールが関係している。それは日本語で書かれており、僕には全く読めなかった。日本人の部下に翻訳させると、それは預言の様なものだった。魔物氾濫発生の兆候や蜥蜴の王という謎の存在の目覚め、更にはダンジョンの進化。とても正気のものとは思えなかった。
しかし、<楽園の賢者>は僕からのどんな相談にも最適解を示してきた。インターネット上で出会って間もないが、彼の助言に従った商談は既に一千万ドルの結果を出していた。
ずっと東京を訪れたいと思っていたが、アラブ人である僕にはそう簡単なことではなかった。ダンジョン発生以前、クルド人や中東の紛争地域の難民がヨーロッパや日本に押し寄せ、国を乗っ取ろうとしたことがあった。彼らは当時リベラル派と呼ばれた左翼主義者たちと共謀し、アメリカではガヴァナー(州知事)の座を簒奪した者もいた。
結局、彼らは身内を利権で儲けさせることにしか興味はなく、政治的混乱を生むだけだった。各国の国民感情は反アラブ・反イスラムに大きく傾き、アラブ人はあまり歓迎されなくなった。ここ日本は高水準な教育が行き届き、人々の道徳も洗練されているが、やはりアラブ人に対する嫌悪は存在するだろう。
僕は永田町へのアクセスが容易な港区のホテルに着いた。日本人の部下が予約してくれたスイートルームは快適で文句はないのだが、僕は東京の街を知りたくて荷物を置くと、辺りを散策してみることにした。
東京は快適だ。電車に乗れば都内で行けないところはない。新聞やテレビには平然と政府批判をする者がいて、それを理由に弾圧されることはない。外国人労働者たちも正規の雇用契約に基づいて働いており、人並みの暮らしを営んでいた。誰も祖国では考えられないことだ。
公園ではフェミニストが演説していた。「冒険者としての肉体労働は女性差別の温床となりかねない!」とか何とか、音質の悪い拡声器で叫び散らかしていた。イスラム教の信条を抜きにしても、男女の肉体の違いなんてどうにもならないのだから、その主張は妄言にしか聞こえない。女性の社会参画はこちらでも複雑な様だ。
「この平和な日々も夏には灰燼と化すのか。」
僕は改めて、この来日が持つ意味を噛み締めた。
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