第37話 とあるEメール (3)
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私、ワルツは東京湾に面した昭和島にある倉庫を訪れていた。とある中小企業の社長との会食を急遽延期してまでそうしたのは昨夜届いた不審なEメールが原因だった。黒い高級車から降りると、倉庫の前で<毒蛇>の部下たちが待機していた。私は部下たちを連れて倉庫の中に入る。
「ワルツ様、昨夜からかき集めたミスリルの武具と食料、水、医療用品などです。」
そこには倉庫の四分の一ほどを占領するコンテナや段ボール箱の山だった。
「三日後にはアメリカから、一週間後にはフランスとチリからも物資が届く手筈となっています。」
「まだまだ足りませんね。連邦に外貨を流すのは不本意ですが、ロシアからも買いなさい。」
「了解しました。それと、ライフハウス・コーポレーションもオーストラリア、アメリカ、メキシコ、アルゼンチンなどから様々な物資を掻き集めている様です。これから何が起きるのですか?」
「何が起きるかは分かりません。私たちは一つの言葉を信じてコインの表に賭けているんですよ。恐らく日本政府も合衆国政府もすぐに動き出します。」
私は<楽園の主>からのメールを信じることにしたのだ。商人としての私のアドレスにあんなものを送ってくるのは小田原トモさんしかいない。
「匿名でのお取引をご希望でしたら言ってくださればよかったのに......まあ、いいでしょう。」
そう呟いた私は車に戻っていくのだった。
自由党本部では私、吉田タケルが党首である大久保アキオに事情を説明した。とあるEメールの内容、そして宛名<楽園の主>が小田原トモである可能性が高いことも。
「では夏に魔物氾濫と謎の存在の覚醒があり、その後にダンジョンが進化すると。私はこれをどの様にして国会に持っていけばいいんだ......」
大久保さんは酷く堪えていた。
「とは言え、これが事実であるならば日本が崩壊しかねません。民意党は野党であった頃から文句は言っても建設的議論は徹底して避けていた連中です。知識も経験も不足している彼らの手に余ります。」
「ならば彼らのプライドが無駄に高いことも知っているだろう。全くどうしたものか......
それに連立関係にある共栄党は厄介だ。日本の国難となれば、奴らは間違いなく中華共栄構想への加盟に動き出す。」
するとそこに自由党の職員が慌ててやってくる。
「会議中失礼します!大変です!」
「何事かね?」
大久保さんが言う。
「<Macon>CEOのサル・ケルアック様、アラブ首長国連邦の石油王アフマド・サルマン様、<Bee Hive>のリーダーの蛮勇のシグルド様、カトリック教会枢機卿のカール・ミュラー様が日本に向かっています。先程、大久保党首との会談の申し入れがありました!目的は<楽園の主>についてとのです。」
「どうやら、この占いは我々に対してだけではなかった様だな。」
大久保さんの重い口からそう発される。
「会談の準備だ。二週間後に料亭の手配を。それから小田原トモと直接接触した林志明の孫と小野寺財閥のご令嬢、<毒蛇>のワルツ、シェリーも呼べ。大統領選挙を控える合衆国政府の関係者に関しては保留だ。世界冒険者協会も同じく保留とする。恐らくまともな話し合いにならなくなる。」
「承知しました!」
「偶発的な繁忙期となるか、長い戦いの始まりとなるか。吉田君、奥さんと娘さんを東京に呼ぶといい。ホテルなり賃貸住宅なりを探すといい。お金は私がどうにかする。愛する家族に会えないのは嫌だろう。」
「はい!」
こうして自由党の長い戦いは幕を開けたのだった。
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