第36話 とあるEメール (2)
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現在公安警察、正確には警視庁公安部に所属している私、シェリーはロングヘアの地雷系女子に変装して、横浜のとある喫煙所にいた。アメリカの煙草に火を付けると、一口吸い、煙を服に吹きかける。煙草の匂いは嫌厭されることもあるが、同時に密室での作戦の際には体臭を残さずに行動できる。更に熱帯雨林や湿地での作戦でも虫除けとして、この煙は有効だ。
私は大体10分で一本を吸い終える。こうしておおよその所要時間を決めておけば、ある程度の経過時間を知るのにも役立つ。公安に所属する前はテロリストの基地に潜入することもあり、見張りの巡回の間隔を把握するのに役立ったこともある。作戦地域がいつも道徳の通用する先進国であればいいが、現実はそう甘くない。不法滞在していた移民がダンジョン発生後に闇クランを結成する様になったヨーロッパ諸国ですら、貴金属である時計はすぐに盗まれる。私の様に変装を得意とする場合、没個性的なNPCを演じる為には時計は付けない場合が多い。
何故ただの公安の人間にそこまでの経験があるかと言うと、私は以前は金次第でどんな人間からの依頼もこなす雇われの諜報員だったからだ。
しかし、今宵は私としては珍しく純粋にストレス解消の為に吸っている。その原因は明確に一件のEメールだった。差出人である<楽園の主>は正体不明のドメインでメールを送ってきており、自衛の一環として自力で開発したアプリで不審なデータの分析を試みるがその結果も何の役にも立たない。何故ならこの一通のメールはインターネットを通さずにここまで届けられた様だからだ。
こんな芸当ができる存在は知り合いにはいない。この端末にこんなもの送れるのはただ一人、小田原トモだけだ。私はメールの本文に目を通すが、それは怪文書と言う他なかった。しかし、それが未来予知の類だとすると、状況は最悪だ。表面上は安定している現政権、その実情は他国の傀儡と日本の崩壊を画策する共産主義者の掃き溜めだ。魔物氾濫だけでも現政権には機能不全に陥るだろう。
コードネーム<シェリー>、彼女は警視庁公安部のバッヂを持っているが、紙面上は存在しないエージェントだ。その存在を知るのは警視総監を含むごく一部の人間のみ。彼女には上司も同僚も存在しない。
「自由党と連携しつつ、できる限りのことをするしかないか。」
シェリーは煙草の火を消すと、首から下げたペンダントに手を伸ばす。その中には一人の少女の写真があった。シェリーの瞳に感情が煌めくが、ペンダントはすぐに閉じられる。彼女は中華街の喧騒に消えていった。
翌日、横浜中華街のとあるビルで中華系マフィア<狐会>の幹部<首狩り狐>と統一戦線工作部(中国共産党の諜報組織)の工作員二人の変死体が発見された。現場に残された証拠は二つ。血濡れた三角定規と微かな煙草の匂いだった。
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