第29話 ただいま、楽園。
三章開幕です!是非お楽しみください!
<楽園>に転移した私はすぐに自宅に戻り、保護した研究者のシードルを空き部屋に案内して眠った。
「おはよう、シードル〜。」
「おはよう、トモ君。こんなに優雅な朝は2年半ぶりだよ。」
翌朝、リビングに降りるとシードルがバタートーストとコーヒーを用意してくれていた。ニコたちはまだ<楽園>の中でおやすみしているみたいだ。
「おはよう、主よ。」
「おはよう、ヘルメス〜。」
<楽園>の賢者ヘルメスがリビングに来た。
「シードル、紹介するね。この子はヘルメス、不死の賢者っていう魔物だよ。すごく頭がいいんだ。」
「へぇ、いわゆるアンデッドって奴かな?山形の出羽三山ダンジョンとかアメリカでもアンデッドは確認されてるけど、知性は確認されていないはずだ。彼は話しているんだろう?実に興味深いね。」
とシードルが言う。
「興味深いというのは褒め言葉なのか、微妙なところだな。」
ヘルメスがそう返す。
「シードルの言葉は理解できるんだ!」
「できる様だな。」
「本当に不思議だね、魔物の知性って。」
朝食を終えた私はシードルと一緒に<楽園>の扉に向かった。
「これが<楽園>の扉か。」
そう言ったシードルがふと扉に触れると、彼女の動きが止まる。
「何か......体が......熱い!」
そう言ったシードルは二、三分その場にしゃがみ込んだ。熱が治ったシードルはこう言った。
「どうやら僕も<楽園>に気に入られたみたいだ。ダンジョンに肉体が適合するという声が頭の中に響いたと思ったら、[楽園の哲人]というスキルが発言したよ。」
[楽園の哲人] : <楽園>の魔物や動植物、資源の解析が可能になる。魔物と敵対しなくなり、知性ある魔物の言葉を理解できる様になる。また、絶対の防御と状態異常への完全耐性を得るが、一切の殺生が不可能になる。<楽園>内部の訪れたことがある場所に転移できる様になる。
シードルが手に入れたスキルはこんな感じの様だ。私のスキルに似たものだった。
「儂の言葉もわかる様になったか?」
「おお、魔物が喋っているぞ!」
どうやらヘルメスの言葉が分かるみたいだ。
「じゃあ<楽園>に行こう、シードル。」
「ワクワクが止まらないよ、トモ君!」
一階層には鬼たちや鳥の魔物たちが移り住んでいた。ニコとオモチがお出迎えしてくれたので、数日かけてシードルを<楽園>の最下層まで案内した。
「ここは異常だよ、トモ君。いや、他のダンジョンこそが異常なのかもしれない。<楽園>は完成された一つの異世界とでも言うべきだろう。全ての魔物がダンジョンの自然と調和し、文明と呼ぶ他ない知的財産を有している者もいる。既存のダンジョンは支離滅裂な自然環境だったが、<楽園>には文字通り、一つの環を成す環境がある。これは迷宮研究者として鎮座してはいられないよ!自作の相棒たちがあればどれほど最高だったんだけどね......」
<楽園>を一周したシードルは研究者魂を煮えたぎらせていた。自作の相棒というのは彼女が自ら作った天下無双の迷宮研究の機材なのだとか。その機能に興味を持った迷宮庁の職員が全て没収したが、解析は失敗。修理不能の状態で帰ってきたので捨てたと言う。
「驚くのはまだ早いよ。これから六階層を解放するんだからね。」
私は旅行中、魔物を保護する度に[楽園の灯台]の管理画面にpt、つまりは何らかのポイントが貯まっていることに気付いていた。六階層の解放に必要なのは200pt。それに対して現在所持しているのは500,000ptだ。数値から察するにこれは保護した魔物の個体数に応じて付与されると見て間違いないだろう。さあ、<楽園>改造の時間だ。
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