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迷宮動物誌 〜私と魔物たちの楽園暮らし〜  作者: ローラーコースター
間話集

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29/58

28話 もう一つのランデヴー

一月七日のローファンタジーの日間ランキング86位にのっていたみたいです。読んでくださっている皆様、評価してくださった方々、誠にありがとうございます。今後も本作品を楽しんでいただけたると嬉しいです。

今後もブックマークや評価、感想、誤字報告よろしくお願いします。

 時を同じくして、永田町一丁目の自由党本部ではもう一つの政治的会合が秘密裏に行われていた。一般には秘匿されているが自由党本部には地下二階があり、そこには監視カメラはおろか一切の電子機器が存在せず、時代にそぐわないアナログの世界が取り残されていた。理由は単純で、限られた人間しか入ることができない部屋に地下二階だけに強力なノイズ信号を送るジャマーが整備されているからだ。そのため、この空間に立ち入る者は皆、地下一階で全ての電子機器を警備員に預けなければならない。


 今、地下二階には奇妙な組み合わせの六人が一堂に会していた。




 大久保アキオ、彼は自由党党首だ。かつては内閣総理大臣を7年間歴任したが、自由党は今では野党第一党。彼も今ではただの衆議院議員だ。民意・共栄の連立政権の迷走によって静かに、しかし確実に傾く国政を憂いていた。


 吉田タケルもまたこの会合に招待された一員だった。秋田県の衆議院議員で、秋田県での迷宮農業の発展により、政治家としては相当若い50歳でありながらその政治的発言権が絶大であった。


 公安警察のシェリー。出自はおろか、本名も公安での地位も誰も知らない。唯一分かっているのは彼女は元々裏社会の傭兵で、変装の達人であるということだ。裏社会では<仮面の死神>と呼ばれていたらしい。


 マリー・ルーというアメリカ人もこの地下二階にいた。彼女はCIAのエージェントで、表向きはアメリカ大使館の職員だ。それ以外の情報はその一切が秘匿されていた。


 秋野アンナ、彼女は世界冒険者協会の日本支部長。普段は赤坂の支部に勤務しているが、政治家との交流の際にはこうして永田町を訪れていた。


 つい先日Sランク冒険者となった小野寺ミカは秋野アンナに連れられて自由党本部を訪れていた。彼女は高ランク冒険者として若手の星と称されている。しかし、彼女について特筆に値するのはそれだけではない。彼女は日本四代財閥の一角、小野寺グループのご令嬢でもあるのだ。


 地下二階を訪れた台湾迷宮報の記者、リンもまたただ者ではなかった。彼女は迷宮発生後の台湾の発展を主導した林志明(リン・チミン)の孫娘、林淑恵(リン・シューホエイ)だ。現在は祖父の財閥、ライフハウス・コーポレーションの役員でもある。


 ワルツはこの会合では異色の存在だった。常にフードで顔を隠している彼は表向きはブラックダガー持ちの商人。だが、裏の顔は闇クラン<毒蛇>の総長、つまりはこの空間で唯一の反社会組織の人間だった。報酬に対してリスクが大きい殺しや誘拐、人身売買には一切の関わりを持たないのが<毒蛇>だが、それでも四都市で闇市を牛耳り、様々な機密情報の他、非正規に魔石やミスリルまでをも売買している。そんな彼は他の参加者の素性を見切って、流石にこの会合の情報は売れないと値踏みした。日本政府だけでなく、台北にホワイトハウス、世界冒険者協会、そして何より<仮面の死神>をも敵に回すことになるのだからだ。


 浅夢和尚もまた異色の存在であった。彼は飛騨山脈の常勝寺で育てられた孤児で、今は常勝寺の住職であった。一般にはまだ公表されていないが、彼は<求道者>のジョブに目覚め、世界冒険者協会によって日本で三人目の<英雄>に認定された人物だった。





「......では皆さんの情報を纏めると、小田原トモという人物が一連の事件の中心人物であると。」


 上信越高原・木曽駒ヶ岳間での未確認飛行物体、淡路島ダンジョン前線基地への襲撃と特定の魔物の消失、倉敷ダンジョンの迷宮研究所での迷宮庁の怪しい動き。これらの場所に共通しているのが小田原トモという人物だった。奥多摩ダンジョンでのオーガの消失と飛騨ダンジョンの崩壊だけは情報がないが、小田原トモの行動範囲や移動速度を計算すれば彼女の関与は可能だった。


「大久保さん。彼女は凄まじい政治的影響力を持っています。ダンジョン内に交流可能な魔物がいて、彼らからの交易品は世界情勢を塗り替えかねません。」

そう吉田が言う。


「世界冒険者協会としても、この情報は軽んじることはできないね。ダンジョン内での交易だけじゃない。家畜化せずに魔物を使役する技術、飛行可能な魔物の使役、もしかしたら魔物の消失やダンジョン崩壊すらも彼女のスキルの類なのかもしれない。」

支部長アンナも畳み掛ける。


「おじいちゃんにはこのことはもう報告してある。ここまで多くのことに関わっているとはここに来て初めて知ったけどね。ライフハウス・コーポレーションとしてはトモさんのリクルートに50億円の用意がある。交渉は私に一任されてるよ。」

そうリンが宣言する。


「私としてはトモ様の平穏な日常と自由こそが肝要かと。世界が理想論では回らないことは百も承知ですが、人間には俗世の喧騒とは別に精神の平静というものが欠かせません。それこそ、権力闘争に巻き込まれて他国に渡られるのは皆さんとしても不本意なのでは?」

浅夢和尚は冷静にその場を治める。


「我々としては是非とも合衆国に迎え入れたいところだがな。こちらとしては永住権の準備はできている。更にエネルギー技術の提供があれば政府高官と同等の待遇を約束できるそうだ。今頃バッヂャーの奴が公邸で売国奴ごっこをしているだろうが、こちらの収穫の上回ることはないだろうな。」

マリー・ルーが議論に熱を戻す。


「私が倉敷ダンジョンでトモ様とお会いした時、彼女は"ある情報"をお買い上げになりました。それはジメジメスライムがいる場所でした。ジメジメスライムは当時第三居住区に捕獲されていましたが、翌朝、ジメジメスライムは消息不明となりました。私どもの情報網によると、倉敷ダンジョンの第三居住区には重要な人物がいた。それは2年半前に迷宮庁によって身柄を拘束された天才研究者<シードル>様です。同じく、我々の情報網では彼女も行方不明とのことです。」


「なんということだ...あの愚か者どもが!一日本国民の基本的人権を侵害していたのか!よりにもよってあの迷宮農業の産みの親だぞ!」

吉田タケルが激昂する。大久保党首は迷宮庁の暴走とも、共産主義者の為政としての必然とも言うべき明確な違憲行為にただ唸ることしかできなかった。


「私たちライフハウスとしてはこの上ないチャンスだね!トモさんを味方につければ日本最強の研究者の協力も夢じゃない!」

リンの表情はこれまでにないほど明るくなる。


しかし、マリー・ルーは逆に猜疑心を抱いた。

「それは迷宮農業を促進している我らの大統領も大変お喜びになるだろう。しかしワルツ殿、何故そんな重大な情報を何の見返りもなくこの机上にあげた?」


「私としてはトモ様と商売ができればそれ以上の望みはありませんので。将来の顧客である皆様により多くの資産があればこちらもより儲けることができる。そうではありませんか?」

ワルツがそう言うと、リンが彼を睨む。ワルツの言葉は真っ赤な嘘だった。ワルツはアイルランド系移民の家庭に生まれた。両親はアイルランドの諜報員で、ワルツもまたアイルランドに本部がある商人ギルドのブラックダガー持ちという隠れ蓑を着た諜報員だ。商人ギルドはダンジョン発生で急激に発展したアイルランドの諜報機関という側面も持ち合わせているのだ。<毒蛇>に潜入し、総長となることで組織を乗っ取ったのもまた諜報活動の一つに過ぎなかった。リンはその壮大な秘密を嗅ぎ取ったのだ。


 私、とんでもないことに巻き込まれちゃったみたい......Sランク冒険者、小野寺ミカを置き去りに各国の思惑は一つの大きな渦になっていくのだった。

読んでいただきありがとうございます。現在、毎日最低で3〜4話ほど投稿しています。

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