第26話 或る元迷宮開拓作業員
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冒険者ギルド、それはダンジョンからの魔物氾濫発生以後に結成された、魔物を倒す力のある者たちの集団であるクランをまとめる国家組織だ。設立当初はどの国でも反発はあったが、冒険者たちへの保険制度や特権を整備すると、世界中のクランは殆どギルドの傘下に下った。
しかし、それでは管理できない者たちもいた。それは群れることがない強者たちだ。ダンジョン内部での経験から同業者たちを信用しない者や、その力故に単騎で魔物を蹂躙する者もいた。特にある地域や国を救った英雄たちは最早、ただの冒険者ではなく、軍事力としても政治的影響力としてもとても一国で管理できる者ではなかった。
そこで迷宮開拓を先導するアメリカ、イギリス、アイルランド、イタリア、モンゴル、日本、台湾が常任理事国となって<世界冒険者協会>を設立した。イギリスに西洋本部を、台湾に東洋本部を置き、中華共栄構想とロシア以外の国々の迷宮開拓を支援すると共に監視している。身近なところでは各国の冒険者ギルドが設ける冒険者ランクの基準となる<迷宮戦闘力>を制定した。しかし彼らは資金と人材の不足により、政治的に不安定な中東や南米の一部地域とアフリカ大陸に支部を持たない不完全な世界機構だ。
つい先日まで迷宮開拓作業員だった町田キョウコは今、とある封筒を開けると、歓喜した。
「よし!合格だ!」
彼女は先日の飛騨ダンジョン崩壊を受けて、世界冒険者協会の職員に転職した。業務内容は日本冒険者ギルドとの連絡や、国内で収集されたダンジョンの情報の整理と分析。そしてSランク以上の冒険者たちの依頼受付や報酬のやり取り、いわゆる受付嬢だ。各国の冒険者ギルドでは冒険者ランクはFからSまでとなっているが、世界冒険者協会は国営ギルドでは管理できない実力者たちをSSランク冒険者として認定し、その中で政治的影響力や軍事的影響力が認められる程の実力者たちを<英雄>に認定して管理している。
「トモちゃん、今頃何してるのかな〜。」
キョウコはかつての同僚、小田原トモを思い出す。迷宮庁第八開拓部隊で唯一仲が良かった彼女は好奇心旺盛で、ちょっと不思議な女の子だった。人の死が身近なダンジョンにいればあの程度の不思議さはみんな持っているものだ。トモとは初任給で鯨肉を食べに行ったり、休暇が重なった時は遊んだりもした。
返信が来ないSNSのメッセージを見つめる。トモちゃんもきっと転職やら休暇やらで忙しいのだろう。キョウコは明後日からの新しい仕事に期待を寄せつつ、眠ることにした。
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