第20話 ダンジョンマスターに会えました
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七階層は霊山と呼ぶに相応しい、紫雲漂う大きな山があった。その頂には玉座があり、四種類の魔物が周りにいた。
「私は<タタリミミズク>の長である。人の子よ、我らがマスターの前で不審な動きがあれば即座に滅すること、ゆめゆめ忘れぬ様にな。」
カギミミズクはその名の通りミミズクの見た目だが、胸元の三本の羽だけがお札の形をしていた。
「俺は<ヤマイクイ>。このダンジョンの癒しの手だ。」
ヤマイクイはアリクイの様な見た目で、頭にシカか何かの頭蓋骨を被っている。このダンジョンに一頭しかいない様で、とても貴重な魔物なのかもしれない。
「僕は<サトリワシ>の長。僕たちは精霊たちの声を聞いて物事の吉凶を占うんだ。」
サトリワシ、今回のもう一体の保護対象だ。四つある目は常に閉じており、額には不気味な紋様がある。
「わらわは<鬼火雉>の長じゃ。死霊と語らい、弔っておる。」
鬼火雉は雉の形をした鬼火で、周りには二つの鬼火が揺らめいていた。
[楽園の灯台]でも探知できない五階層より上に住む彼ら。やはり私の手が届かない魔物はまだたくさんいるんだ。
「マスターがいらっしゃる。」
そう、マジナイヘラサギが言うと、遥か天上から神々しい光が玉座に降りてきた。あまりの眩しさに私は目を瞑ってしまう。
「初めまして、人間。私は<白鷺姫>。」
恐る恐る目を開けると、辺り一面にマジナイヘラサギやサトリワシ、鬼火雉が飛び回っている。玉座には純白のドレスを着た女の子がいた。十五歳くらいだろうか?
「私はこれでも25歳よ、トモ。」
今、思考が読まれた!てか年上なのか。
「これは私の能力の一つ。色んな生き物の意志や感情、思考を感じ取れるの。あなたの要件も分かるわ。嘘は言ってない。サトリワシ、占ってくれる?」
「御意。」
するとサトリワシは四つの目を開き、遥か天上を仰ぐ。
「うむ。<楽園>は豊かな土地が広がっている様だ。水も食料も豊富にある。トモ殿以外の人間は立ち入ることが出来ず、強大な魔物たちが平和に共存している様だ。私たちも近々<楽園>を訪れるだろう、精霊たちがそう言っている。」
サトリワシがそう告げる。
「じゃあ行こうか、皆。」
「「「「「御意。」」」」」
魔物たちが忙しなく準備を始める。マジナイヘラサギたちとヤマイクイは特に荷物もないが、鬼火雉は一族の宝だという透明な髑髏を運んでいた。タタリミミズクたちは死の翼という、漆黒の木の枝を、サトリワシたちは精霊の貝殻という、美しい貝殻を運んでいる。
「今のうちに族長たちの名前を決めるわ。」
知性あるマジナイヘラサギは旧約聖書からソロモンさん。タタリミミズクの族長はアーサー王物語からマーリンさん。ヤマイクイはエジプトの医学の神様イムホテプからイムさん。サトリワシの族長は悟ってるんだろうということでシッダールタからシッダさん。実に<楽園>二人目のお釈迦さまだ。鬼火雉の族長はシラヌイさんにした。私だってペットも飼ったことがない中、頑張って名前を考えてるんだ、とネーミングセンスへの罪悪感を誤魔化した。
肝心の白鷺姫はなるべくかわいい名前を考えて、アリスちゃんにした。
「そう言えばアリスちゃん。アリスちゃんってここのダンジョンマスターなんだよね?」
「そうよ。やっと野蛮な人間たちとおさらばできるわ。」
「ダンジョンマスターがダンジョンからいなくなって大丈夫なの?」
私は気になって聞いてみることにした。
「何となく分かることなのだけど、ここはきっとあなたの<楽園>と違って不完全なの。だからダンジョンマスターが不在となると、この玉座と共に崩壊すると思うわ。」
まじかー。絶対地上世界で大問題になるじゃん。
「でも元はと言えば人間が悪いのよ。私たちの使者である知性あるマジナイヘラサギを二羽も殺されたんだもの。しかもあなたはそれを知らなかった。知性ある魔物がいることも、それを殺したことも隠し通したいんだわ。そんな狡猾な種族は魔物にもいない。丁度いい罰だわ。」
アリスちゃんにそう言われると、私は納得してしまった。
「じゃあ行くよ。旅が終わったら私も<楽園>に戻るわ。」
「待ってるわ。じゃあね。」
そうアリスちゃんが言う。
「じゃあね〜。」
彼女たちは転移していった。
転移が完了すると目の前にホログラムが現れる。
『ダンジョンマスターが消失しました。十日以内にダンジョンが崩壊します。』
「ニコ、バステト、オモチ。急いで脱出するよ。」
私たちは飛び立った。
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