第18話 私は仏様じゃありませんからねっ!
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次の目的地、飛騨ダンジョンはオモチに乗って二十分くらいだった。ダンジョンに入った頃には夕方で、私たちは近くで買った里芋を使って鍋にした。飛騨ダンジョンは一面が山岳地帯。鉄や貴金属が豊富に眠っている。最近ではレアアースと呼ばれる鉱物資源も発見されたらしい。今までは中国が覇権を握っていたレアアースが遂に日本で大規模に供給できるのでは、と世界中が期待しているんだとか。
飛騨ダンジョンはその景観から霊山とも呼ばれ、世界の安寧を祈願しにお坊さんや神父様たちがよく来るらしい。彼らは山伏となって、この飛騨ダンジョンで三日三晩経典を読むらしい。
ダンジョンができてから、宗教は不思議な存在となった。ありとあらゆる宗教の聖職者はジョブやスキルを得る確率が高いのだ。これもまた原理は不明だが、彼らは決まって<求道者>というジョブを得て、治癒の力を会得する。その代わりに決して攻撃に関係するスキルを得ることはなかった。
ダンジョン発生以前の宗教的指導者や権威に関係なく、まるで神に選ばれるかの様に求道者は現れた。有名なのはアイルランドの聖ライノット様だ。彼は南米系の父とアイルランド人の母の間に生まれた少年で、<福音>というスキルで彼の声を聞いた者はどんな傷や病を患っていても癒されるのだとか。
私が焚き火にあたりながらそんなことを思い出していると、一人の山伏が近付いてきた。
「私は修行の身としてこのダンジョンに来たのですが、道に迷い、食糧が底をついてしまいました。何か食べ物を恵んでくださいませんか?」
「いいですよ。今作るので少し待ってくださいね。」
私は里芋の残りを出して皮を剥き、鍋にした。
「質素なものでごめんなさい。どうぞ。」
すると山伏は凄い勢いでそれを食べた。しかも激熱の鍋を素手で掴んで。おもむろにウィスキーの瓶を取り出すと、それで芋の鍋を流し込む。お酒はあるのね、と呆気に取られてしまった私を横に、山伏は身の上を語り始めた。
「私は浅い夢と書いてセンム和尚と言います。両親は冒険者で、私が5歳の頃にこのダンジョンに入ったきり、帰ってきませんでした。お寺に引き取られた私は仏の道を歩みましたが、二十歳になって酒の味を覚えてからというもの、やめることはできませんでした。二年前、育ての親も亡くしまして、今はただ日々を酒で流し込む日々です。私も[求道者]になれたらなぁと、身の丈に合わないことを考えてしまいます。」
「その熱い鍋を平然と持ってますし、あなたはもう[求道者]じゃないですか?」
私がそう言うと、浅夢和尚は何かあり得ないものでも見つけた様に私を見つめる。
「おお仏よ、あなたはこんなところに現れてくださったのですね!」
浅夢和尚はそういうと、走ってどこかへ行ってしまった。なんか壮大な勘違いをされてしまった様だ。
あの後ぐっすり眠った私は二階層に向かった。二階層には<コケイワヤギ>という魔物がいる様で、それが今回の保護対象だ。オモチに乗って険しい山々を見下ろす。すると、険しい斜面に緑色の魔物がいた。ほぼ直角の斜面に登り、ペロペロ舐めている。私はその魔物に近づく。近くで見ると大きなヤギで、全身に苔が生している。私が何を話しかけても「めー。」と鳴くだけ。今回もニコに確認してもらって問題はなかったので、私はコケイワヤギたちを転移させた。
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