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迷宮動物誌 〜私と魔物たちの楽園暮らし〜  作者: ローラーコースター
第一部 二章 旅行を楽しもう!

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第15話 日本にもコンドルはいます!

楽しんでいただけたら幸いです。ブックマークや評価、感想、誤字報告よろしくお願いします。

 雨が止むと、バステトの毛並みもすっかりサラサラに戻っており、私たちは山小屋を出た。お別れの前にミカさんとハナさんとはSNSで繋がった。少し投稿された写真を見てみると、ミカさんは相当なお嬢様だ。上信越高原ダンジョンはどうもきな臭い様なので、急いで<ユキコンドル>を仲間にしたいところだ。


 手続きを終えて、ダンジョンの内部に入った私たち。上信越高原ダンジョンはその名の通り、ダンジョン内部も高原になっていて、入り口からしばらくは険しい道のりになっている。聞いた話ではここは日本国内有数のミスリルの産地だ。鉱山を中心に居住区が建設され、居住者は鉱山作業員とその家族が大半だ。

 鉱山作業員は電気が使えないダンジョンでは過酷な仕事だ。更にミスリルが取れる鉱山には正体不明の毒ガスが充満しており、宮城県の松島ダンジョンで採取できる<浄化の荒栲(あらたえ)>という特殊な海藻をフィルターに加工したガスマスクで毒ガスを防いでいる。ちなみにその海藻は宮城県の松島、スリランカのマンナルダンジョン、チリのラ・セレナダンジョン、フランスのコルス島ダンジョンでしか発見されておらず、代替品は発見されていない。

 中華共栄構想がヒマラヤのアンナプルナダンジョンを得たところで、この海藻が手に入らなければ大規模なミスリルの採掘はできないだろう。


 バステトは斜面も岩場もお構いなしに進める為、六日で五階層に到達した。上信越高原ダンジョンの前線基地があるのは第二層の奥地。鉱山開発に注力している為、前線を押し上げることよりも居住区の安全確保が優先された結果だ。

 四階層まではずっと似た様な高原だったが、五階層は違った。五階層は中央に大きな山脈があり、それを森林が取り囲んでいた。今回の保護対象はユキコンドルという魔物だ。見たことはないが、名前からして雪を戴いている山脈のどこかにいるはずだ。


「念の為にコート持ってきてよかった〜。二人は寒くない?」

私はニコとバステトに聞いてみた。

「私は毛皮があるので大丈夫です。」

「僕も大丈夫なの。お日様が元気で光合成が捗るの!」

二人とも大丈夫そうだ。そんな雑談をしながら山を登っていくと、ふと、頭上から甲高い笛の様な音がした。

「あれ、ユキコンドルかな?」

そこに飛んでいたのはふわふわの羽毛が特徴的は純白の猛禽類だった。

「ニコ、単眼鏡出してくれる?」

私は単眼鏡で観察してみると、それは禿頭まで真っ白なコンドルだった。[鑑定]で確認するとユキコンドルだった。背後から一際大きな鳴き声がして、ふと振り返るとユキコンドルの一羽が私の肩を鷲掴みにして持ち上げる。

「うわぁぁぁぁ!」

私の望んでもない空の旅が始まった。


 ユキコンドルは山脈をぐるっと一周していく。まるで住処を自慢しているみたいだ。上空から見て分かったのだが、この山脈は中央に窪みになっている土地がある。そこには肋骨が顕になった巨大な獣の骸があった。腐敗が進行していて、その獣の正体は全く検討がつかない。


 空の旅に満足したユキコンドルはその窪みへと急降下を始める。スキルがあるとはいえ、死を覚悟するほどの恐怖体験だ。地面に衝突する寸前、ユキコンドルは器用に上昇して、私が死なない様に地面に降ろしてくれた。

「侵入者がいると思えば、不思議な生き物だ。二足歩行で体毛もない。君は何者だ?」

そこにいたのは顎鬚の様な飾り羽が特徴的な一際大きなユキコンドルだった。

「私は人間のトモだよ。」

「君の様な者が人間か。この目で見たのは初めてだ。ではトモと呼ぶことにしよう。我らの住処に何の用だ?」

「私は<楽園>というダンジョンのマスターで、ユキコンドルの皆さんを私のダンジョンに呼びたくて来ました。」

「ふむ。そこはどんなところなのだ?」

「<楽園>は平和な所で、水にも食料にも困らないよ。こんな感じの死骸はないけど。」

「この死骸はな、ベヒモスという。この山の主であったが、我らが仕留めた。我らはこの肉で腹を満たしているのだ。これがなければ我らは生きていけない。」

「それならこのベヒモスも持っていけるよ。」

「ほお、ならば移り住んでも良いだろう。しかし、何故君は我らの様な魔物をダンジョンに呼んでいるのだ?」

「それは人間に滅ぼされない様に、よ。このダンジョンも二階層の奥地までは人間たちが魔物を滅ぼそうとしているの。」

「人間は君の同族であるというのに?」

「人間は確かに同族だけど、<楽園>の主になって、魔物にも命があって、生きているから。私は人間を襲わない魔物は護りたいの。」

「ふむ。ならば我らも<楽園>に行くことにしよう。少し待て。我が子たちを呼ぼう。」

すると彼は断末魔の様な不吉な声で鳴く。すると山脈のあらゆる所から百を超えるユキコンドルたちが集まってきた。ユキコンドルたちがニコとバステトも運んできてくれた。


「して、<楽園>はどの方角に飛んでゆけばいいのだ?」

「それは私が転移で送っていくわ。その前に、あなたの名前を決めましょう。」

ユキコンドルはふわふわした飾り羽を纏っていて、どうしても可愛い名前しか思いつかない。

「じゃああなたはオモチ。どう?」

「我ら魔物は名付けという風習がない。それでよい。それより、トモはこの後どうするのだ?」

「私は他の魔物を保護しに旅をしているの。」

「それなら我に乗るといい。我以外を転移させてくれ。」

「分かったわ。」

私はユキコンドルたちとベヒモスの亡骸を転移させる。


「では我の背に乗るといい。」

そうオモチが言うので、私はオモチの背中に乗る。ニコとバステトもちょこちょことよじ登ってきたが、バステトはちょっとご機嫌斜めだ。

「主を運ぶのは私の特権だと思っていたのに......」

読んでいただきありがとうございます。毎日最低で一話は投稿していますが、時間は不定期となります。

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