第14話 誰しも事情はあるからね。
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「さて、私たちの事情は話した。今度はお嬢さんのことを聞かせてくれないかな?」
タケルさんが聞いてくる。
「私が教えなきゃいけない義理はないよ。」
「あなたの仲間たち、記録にはないら魔物だ。そもそも、家畜化以外に魔物を使役する方法はないはず。それにその剣も首飾りも、何でできているのか全く想像がつかない。日本の政治家として、是非とも勉強させていただきたい。
所で、私たちとの連絡が途絶えれば自由党の仲間や公安が動く。更に冒険者殺しは迷宮庁も冒険者ギルドも決して見逃さない。お嬢さん、私たちを口封じに殺すことはできないよ。」
この人、只者じゃない。いつ自分が死ぬか分からない状況でこうも冷静になれる人間はそう多くない。私が知る限りでは元自衛隊か、元警察官か、人を殺めたことのある冒険者くらいだ。
「タケルさん、あなた自衛隊にでもいたの?」
そう尋ねると、タケルさんは驚いた様な顔をした。
「よく分かりましたね。ということはあなたも?いや、そうは見えない。もしかして冒険者か迷宮開拓の関係者ですか?」
どの道もう全てを隠し通すことはできないので、私はある程度の事実とある程度の虚構を混ぜて話すことにした。
「私は迷宮開拓作業員のトモといいます。その子はバステトでこっちはニコ。」
「ニコはニコなの!」
他の人には聞こえないとはいえ、こんな時にも可愛いなんて罪な食虫植物だ。
「この子たちとは以前作業で入ったダンジョンで出会いました。それ以降、ずっと友達です。」
「ほう、ダンジョンにその様な魔物がいたとは。種族は分かっているんですか?」
「いえ。手掛かりさえありません。それでこの剣と首飾りはとある魔物からの贈り物です。彼らは人の言葉を話し、高度な文明を築いています。」
「そ、そんな魔物が.....それはどこに!何という魔物なんですか!?」
「それは教えられません。彼らとの誓約があるので。強いて言うならば、生息地は彼らの許可が無ければ辿り着けない秘境とだけ。彼らは滅多に秘境から出てくることはありませんが、この首飾りと剣を待つ私に限って、彼らと交易ができます。」
「なるほど。彼らの文明はどの程の力があるのですか?」
「私が知る限りでも、日本の冒険者を根絶やしにできます。」
私がそういうと僅かに、しかし確実にタケルさんとシェリーさんの頬が強張った。
「ここに来た目的は?」
「この子たちが広い所で遊びたがってたので、居住区の規模が小さい上信越高原ダンジョンの二階層に行こうかと。」
「事情は把握しました。お嬢さん、いえ、トモさん。あなたはこの国の政治を左右しかねない。もしかすると、魔物との交流という点では世界を揺るがすやもしれません。
もしも、あなたが個人では対応できない問題が起きた時は私にご連絡ください。」
そう言って、タケルさんは名刺をくれた。
「公安としても、トモさんの存在は無視できないでしょう。上への報告はしないでおきます。何かあればここまで。」
シェリーさんも名刺をくれた。真っ白な紙にシェリーとだけ書かれたもので、裏返すと電話番号が手書きでひかえられていた。
「トモさん、私たちもごめんなさい。調査協力依頼と聞いていたから、どうすればいいのか分からなかったわ。」
「私たち、悪かった。深く反省。」
ミカさんとハナさんまで謝ってくれた。冒険者は依頼の条件を違えると重い罰則が課されるし、依頼に失敗すると稼ぎはゼロだ。ダンジョンでの仕事は短くても一ヶ月半は拘束されるので、依頼の失敗は致命的になる。その状況では何もできなくて当然だ。ミカさんが何かあったら頼ってね、と連絡先を教えてくれた。
私たちはすっかり打ち解けて、ミカさんの淹れた紅茶を飲みながら、私が荷物に忍び込ませていたマシュマロを食べた。室内はさながら女子会。タケルさんには申し訳ない。
ダンジョンの中では依頼した冒険者ですら詐欺師であったり、人殺しであることもある。更にインターネットや通信機械が利用できないダンジョン内では誤報、誤解、ミスが対立や敵対に直結したりもする。一触即発の危機も話し合えば案外簡単に解決して、相手と手を取り合えるものだ。命を取り合う寸前だった関係の相手とも事情次第では打ち解けることができる様になったのは、私にとっては必ずしも悲しい職業病ではない。
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