第13話 山小屋、拳銃付き。
楽しんでいただけたら幸いです。ブックマークや評価、感想、誤字報告よろしくお願いします。
次の目的地、上信越高原までは三時間程度の移動を予定していたが、あとちょっとというところで雨が降ってしまった。カッパを羽織って雨宿りできそうなところを探していると、名前も分からない山の奥だと言うのに、山小屋があった。中には明かりがついているので入れてもらおうと思い、扉を開けてみる。
「すみませ〜ん。雨宿りしてもいいですか?」
中にいたのは二人の二十代くらいの女性と市役所にいそうなおじさんが二人いた。四人はかなり戸惑った様子だ。
「い、いいですよ。」
「ぜ、是非是非〜。」
二人の女性が言ってくれた。二人はミスリルの鎧を着ており、片方が剣と盾、もう一人が弓を持っていた。確実に冒険者だろう。上信越高原ダンジョンまでは車で二十分だが、冒険者ならダンジョン街のホテルがあるはずだ。十中八九訳ありだ。
ぎこちない空気が漂う。暖房の効いた部屋でぬくぬくして温まったところで、事情を恐る恐る聞いてみることにした。
「お二人は冒険者ですよね?ホテルが満室だった、とかですかね?」
「え、ええ。私はミカ、Aランクの騎士よ。」
「ハナ。同じくBランク。射手。」
優雅に紅茶を嗜んでる方がミカさんで、携帯食料を貪る無口な方がハナさんらしい。ランクというのは冒険者の実績によって与えられる等級のことで、一番上のSランクからFランクまである。
「そこのお役所の方々は?」
「こっちは」とミカさんが紹介しようとすると、スーツのおじさんの一人が静止する。
「君、若いなら知らない方がいいこともある。」
そういうと胸元から拳銃を取り出して、こちらに向ける。
「それは脅しですか?」
「君の対応次第だよ。」
自分の腰に差した光明の剣をチラリと見る。サブテラニアンの長曰く、相手が嘘をつけば震える。剣はフードコートの呼び出しの様に、確かに震えた。
「ニコ!バステト!」
私は二人を呼ぶ。するとニコが私の足元に、バステトが四人の背後に回る。
「おじさん、嘘はいけないよ。」
迷宮開拓は危険が伴うが、それは魔物だけではない。物資不足の冒険者やダンジョンに潜伏する犯罪者もいる。私はそういう連中の対応の経験もある。ラプトルや護衛の冒険者が平然と人を殺める様も、騙し討ちされる様も見てきた。嫌悪感はあれど、私の声が震えることはない。
急いでもう一人のおじさんも拳銃を取り出そうとする。
「動くな!武器は捨てなさい。」
おじさんたちだけでなく、ミカさんとハナさんも武装を解除した。彼女たちも仲間だったか。
「正直に事情を話すならこれ以上のことはしないよ。」
私がそういうと、四人が肩の力を抜く。
「お嬢さん、あなたは民意党のことは知っているかい?」
これまでずっと無口だったおじさんが話し始める。
「民意党は現政権を担う政党だが、そこには闇がある。彼らの半分は議員バッヂをつけること以外は考えていない無能。もう半分は中国共産党の傀儡、操り人形さ。
彼らは中華共栄構想への日本の加盟を画策しており、現在、上信越高原ダンジョンでの工作活動をしている。強力な魔物、開発に莫大な資金がかかる資源、先の魔物氾濫の様なことが起きれば大成功。彼らは日本政府単独での対応が不可能な事案を言い訳に中華共栄構想に加盟する為、口実を探している。何も見つからなければテロリストの真似事をするらしい。
その工作員というのは人民解放軍お抱えの冒険者四名とマフィアの連中だ。とても日本の冒険者だけでは対応できない。ミカさんとハナさんには調査の協力を依頼している。私は吉田タケル、自由党所属の政治家だ。こっちは公安のエージェント、名前は名乗れないのでコードネームで許してほしい。シェリーだ。」
すると、シェリーはおもむろに首元に手をやる。手を何かを剥がす様に動かすと、おじさんは変装で、中から綺麗なショートヘアの女性が出てきた。
「任務とは言え銃を向けてしまった。申し訳ない。私はシェリー。」
いきなりスパイ映画の世界に迷い込んだ気分だ。
読んでいただきありがとうございます。毎日最低で一話は投稿していますが、時間は不定期となります。
ブックマークや評価、感想、誤字報告もよろしくお願いします。




