第11話 話せば分かるタイプの鬼
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私たちは鬼の集落に向かった。集落は小さな山の谷にあり、藁や原木で作られた簡素な家が立ち並んでいた。集落の真ん中には大きな鼎(かなえ : 大きな鍋)があり、大量の豆を煮込んでいた。族長が雄叫びを上げると、三十体はいるであろう鬼たちが木の大皿に煮豆をよそって食べ始めた。
「お前たちも食え。」
そう言って族長から煮豆をもらった。食べてみるが殆ど何の味もしない簡素な食事だ。
「皆の者、ここにいるのは<楽園>というダンジョンのマスターだ。彼女のダンジョンは平和で争いがなく、水にも食料にも困らないと言う。彼女のそばにいる強大な魔物たちを見れば、疑うこともあるまい。我らはこれより<楽園>に住むことにする。異を唱える者はいるか?」
鬼たちは族長の言葉に反対しなかった。
「ではトモよ。我らを連れて行ってはくれないか?」
「分かりました。では鬼たちを一ヶ所に集めてください。」
族長が指示すると鬼たちは鼎の周りに集まる。
「あと、この鼎は我ら一族の大切なものだ。持っていくことはできるか?」
「大丈夫ですよ。」
「かたじけない。」
「では転移開始します。」
私は念じて[楽園の主]の力で鬼たちを<楽園>の一階層に転移させる。転移は音もたてずに成功した。このスキル、めちゃくちゃ便利だ。
すっかり疲れた私たちは近くで野営をすることにした。仕事用の火打石で焚き火を焚くと、コーヒーを沸かす。
「鬼の皆、仲間にできてよかったの。」
ニコが安心した様だ。
「そうだね〜。冒険者との戦いを見た時はどうなることかと思ったよ。」
「主は人間死ぬの悲しくない?」
「悲しいけど、仕事柄慣れちゃったかな。色んなことがあったけれど、結局人間はダンジョンにお邪魔しているだけだからね。魔物に文句は言えないよ。私たち人間は死ぬことは覚悟の上であの門をくぐってる訳だしね。」
ダンジョン内で人間が死ぬと、24時間でその体はダンジョンに吸収される。迷宮開拓は24年前の魔物氾濫を機に始まったが、あの事件も原因は不明だ。私たち人間は魔物たちの王国に侵略している悪者なのかもしれない。<楽園>での皆との出会いを経て、私はそう考えずにはいられなかった。
[楽園の灯台]を確認すると鬼の保護は完了となっていた。
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