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夏の約束

季節は流れ、夏になっていた。

空を見上げると真っ白な入道雲が見える。

夏の日差しが眩しくて思わず目を細める隼人。

学校の校門前には、勇太の姿があった。


「おっ、隼人。おはよう。

今日も暑いな~。」


「勇太、おはよう。

ほんと、毎日暑いよな。

あとちょっとか、学校に通うの。」


「うん、そうだな。

もうすぐ夏休みだもんな。

夏休みは、隼人は塾の夏期講習?」


「その予定。勇太も塾、行くの?」


「俺も一応、行くよ。

スポーツ推薦、狙ってはいるけどね。でも、やっぱり、勉強もしなきゃな。」


「そっか。勇太は陸上選手だもんな。」


「うん。まぁな。走るのは得意なんだけど……。

勉強はもうちょっと出来ないとヤバいよなぁ。」


「大丈夫だよ、勇太はやればできるんだし。」


「えっ、本当に?」


「うん。お前ならできるよ。」


「なんか、隼人に言われるとできる気がしてきた!」


「そう?まぁ、お互い頑張ろうよ。」

隼人はそう言うと、勇太の肩をポンッと叩いて、自分のクラスへ向かった。


教室に入ると沙耶がすぐに隼人に気がついた。

「隼人、おはよう。」


「おはよう。」

隼人は沙耶の斜め後ろの席に腰掛けた。


「あのさ、隼人に伝えたいことがあって……。」


「なに?」


「夏休みに入ったら、私たち同じ塾に通うじゃない。」


「うん。」


「お弁当、私……時々作ってもいい?

隼人の分も。」


「えっ?

そんな……別に昼ごはんなんて買うし。」


「私、最近、お料理したくて時々作ってるんだ。

お弁当二人分作りたくて。」


「そうなの?」 


「うん。だからさ、良い?」


「じゃあ、別に構わないけど。

作ってくれても。」 


「本当に?」


「うまいやつ、頼む。」


「わかった!」

沙耶は嬉しそうに笑った。


「あとね、夏休み中に家族みんなでまた、キャンプに行かないかって。

お母さんが……。

佐織や勇太君も誘って。」


「キャンプかぁ。

まぁ、受験勉強の息抜きにもなるし、良いかもね。」


「そうだよね。

隼人が賛成なら、私、佐織に声かけてみる。

隼人は、勇太くんね。」

沙耶のワクワクする様子が隼人にも伝わってくる


「わかった。

それにしても沙耶、朝からテンション高いな。」


「そう?だって、色々楽しみだから。

高三の夏休みは1度きりだし。

勉強以外にも思い出つくりたくて……。」


「1度きりか。そうだな。」


二人は顔を見合わせて、微笑んだ。 


「じゃあさ、どうせなら二人いっぺんに誘わない?」


隼人の提案に

「それ、良いかも。」

と沙耶は即座に答えた。


放課後に沙耶と隼人は、佐織と勇太のクラスに行って二人を呼び出した。


「隼人、何?」

勇太が佐織と連れ立って教室前の廊下までやってきた。


「沙耶、隼人君、久しぶり。

二人揃って、今日はどんな用事?」

佐織が勇太の隣に立って二人を好奇心で満ちた瞳で見つめた。


「あのね、佐織。

夏休みなんだけど……。

私たち家族とキャンプ行かない?」


「えっ、キャンプ?」

佐織と勇太の声が重なった。


「うん、そう、キャンプ。

良かったら、二人も一緒に行かないかなって思って。」


「お母さんたちもまた、佐織や勇太君に会いたいみたいだし……」


「行く、行く!」

沙耶が言い終わらないうちに佐織が勢いよく答えた。


「勇太君も行くよねっ。」

佐織に同意を求められて、勇太も思わず頷いた。


「俺も行っても良いんなら……行く。」


「本当に?じゃあ、決まりっ!」

沙耶がはしゃいだように声をあげた。


「良かったな、沙耶。」

隼人もニコニコしながら、沙耶を見ている。


「じゃあ、二人の都合の良い日を教えてもらって日程を調整するね。

あ~、楽しみ~。」

沙耶はそう言いながら、佐織に笑顔を向けた。


「私も楽しみにしてるね、沙耶。」


その後、佐織と勇太を残して、沙耶と隼人は自分たちのクラスへ戻って行った。


「おい、お前勇気あんな。あの家族と一緒に行くんだぞ。」

勇太が佐織に声を落として囁いた。


廊下を歩いていく二人の後ろ姿を見ながら

「うん。特別な家族だから、見たいじゃない。

普段、どんな風なのか……。

皆さん、芸能人みたいに素敵だし。」


そう言うと佐織はうっとりとしている。


「おい、おい。大丈夫なのかよ、俺ら。」


佐織を横目で見ながら、不安そうにため息をつく勇太。


「何だか、楽しみになってきた~っ。

今年の夏休み。」

佐織が大きく伸びをしながら機嫌良さそうに教室に入って行く。


隼人や沙耶たちと遊ぶのは、楽しみだけど……。

俺、上手くやれんのかな?

まっ、高校最後の夏休みだしな。

もう、色々深く考えんのやめようっと。


勇太は、そっと心の中でそう呟くと佐織の後をついて教室に入っていった。


教室の窓からは、真っ青な空が広がっているのが見える。

そろそろ蝉の声も聞こえ始めたーー。


高三の夏休みが間もなく始まろうとしていた。


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