似すぎている二人
初めて隼人と学校で会ってから、沙耶は度々、廊下や図書室、食堂などで隼人とすれ違った。
目が合うと、お互いにはっとして、その後もう一人の自分に会ったような不思議な気分、家族のような懐かしい気分になった。
隼人が友だちと笑いながら話している時には、
「あの笑い方、沙耶に似てるね」と一緒にいた佐織に言われる。
「えっ、そう?」
「うん、目が細くなってちょっとエクボが出る感じ、似てるよ。」
佐織に言われて笑顔の隼人を見ると、確かに鏡に写った自分を見るような気がした。
たまたま、食堂で沙耶と隼人が隣り合って食事をした時には二人でチキンカレーを頼み、
「やっぱりカレーはチキンだよね。」
と顔を見合わせた。
「もしかして、隼人君の家もチキンカレー、よく食べるの?」
「うん、母さんが作ってくれるカレーはチキンカレーが多かったよ。
子どもの頃から……。」
「そうなんだ。」
「隼人君って、苦手な食べ物ある?」
「えっ?
そうだな。
ピーマンかな……子どもみたいだけれど。」
「え~、私もピーマンは苦手。
お母さんが細かく切ってくれて、色々な料理にこっそり混ぜても、すぐにわかっちゃう。」
「そうそう。
わかるよね、すぐに。
あのピーマン独特の香りが苦手なんだよな。」
「隼人君は、オーストラリアにいたんでしょ。
オーストラリアにもピーマン、あるんだ。」
「うん、オーストラリアのピーマンって日本のピーマンよりかなり大きいんだ。
カプシカムって呼んでる。」
「カプシカム?
へぇ~。
面白い名前。」
「グリーンのピーマンは、グリーンカプシカム、
赤や黄色いものは、レッドカプシカム、イエローカプシカムって呼ぶんだよ。」
「全部、カプシカムなんだ。
赤や黄色は、日本ではパプリカだよね。
国によって呼び名も違うんだ。」
目を輝かせて話を聞く沙耶が可愛らしいなと隼人は思った。
まるで妹みたいに……。
えっ、妹?
隼人はふと感じた自分の感情に戸惑っていた。
すぐに打ち解けた沙耶と隼人を見て佐織は、
「まるで、二人はずっと一緒にいたみたいだね。
日本とオーストラリアで別々に育ったのに。」
と思わず言った。
「本当にそうだよな。
お前たち、仲が良すぎだよ。
好き嫌いまで一緒でさぁ。」
隼人と仲良くなった林田勇太も目を丸くして驚いている。
「えっ、そんなに私たち、仲が良い?」
「そ、そうかな?」
沙耶と隼人は口々にそう言いながらも心の中では、何を話してもしっくりとくる、同じことが思い浮かぶ、そんな二人の関係の不思議さを誰よりも感じていた。
私たちって何なんだろうね?
他人なはずなのに……。
声には出さず、二人は黙って見つめ合った。
二人の間には、何かがあるのかもしれない。
お互いを知れば知るほど、それは確信に近づいていきそうな……そんな予感がした。