表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

あなたは、誰?

当たり前と思っていたことがひっくり返る、そんなことが起こったら……。

自分の知らないことが案外、日常には隠れているのかもしれません。

明るい日差しが降り注ぐ午後。

沙耶は、横断歩道を渡っていた。

小さな子どもの手をひく母親や足早に歩くビジネスマン、学校帰りの小学生--。

そんな人々の中に杖を付きながらゆっくりと横断歩道を渡る老紳士がいた。

青信号が点滅し始める。

あの人は、渡り切れるのだろうか?

沙耶は、心配になった。


少しふらつく足を懸命に引き摺り、杖を付く。

老紳士を助けに行こうかと沙耶が動こうとした瞬間、人波の中からある少年が飛び出してきて、自分より先に老紳士の横に立った。


そして、老紳士の背中に優しく手を当て、一緒に歩き出した。


信号が赤に変わる直前に無事に横断歩道を渡りきった二人。

一斉に動き出す車の波。

老紳士が少年に頭を下げ、お礼を言っているようだ。


先に渡ってそんな二人を見ていた沙耶もほっとした。


そして、キャップを目深に被っていた少年の顔を見た時……。

沙耶は、「えっ。」と声をあげるぐらい驚いてしまった。


何故なら、彼の瞳が自分にそっくりだったからだ。

沙耶は、16歳の女子高校生。

彼は男性だが……多分、誰が見ても私たちは似ていると思う。


あなたは、誰--?

沙耶の脳裏にはそんな言葉がよぎる。


しかし、沙耶が声をかけようかと迷っているうちにその少年は、足早にその場を立ち去ってしまった。

いつの間にか、パーカーを着てリュックを背負った彼の姿は人混みの中に消えてしまった。


しばらくその場に立ちすくんでいた沙耶は、我に返ってゆっくりと歩き出した。

あれほど自分に似た人が今までいただろうか?

私は、一人っ子だし、兄弟がいるなんて母親から聞いたことがない--。


家に着くまで彼の顔が何度も思い出された。

そんな彼との出会いが、これからの沙耶の人生を変えていくことになろうとは、思いもよらなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ