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『石』
「この石、すごいよ。
こんなに小さいのに、持ってみると100kgくらいあるんだ」
そう言われて持った石はせいぜい紙くずひとつ分くらいの軽さだった。
「この石、すごいよ。
舐めたら砂糖みたいに甘いんだ」
そう言われて舐めた石は、なんの味もしなかった。
「この石、すごいよ。
投げると遥か彼方100m飛ぶんだ」
そう言われて投げてみると、3mしか飛ばなかった。
「この石、すごいよ。
人に当てても柔らかいから怪我しないんだ」
そう言われて俺は、
そいつへ向かって石ではなく拳を顔面に叩き込んだ。