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『経年劣化』
酷く色褪せた折りたたみ傘があった。
もう骨の金具は錆びて、差す時も力を込めないと開かない
そろそろ新しいのにしよう。
最後に捨てる時に思い出す。
"この傘、いつ買ったんだっけ?"
思い出す、これは昔父親が仕事の帰りに買ってきて以来、俺が勝手に使ってきたものだ。
俺以外誰も使うことは無かったけど、どこかに出かける時は急な雨用にと鞄に忍ばせていた。
別に深い思い出はない、ただの傘だ。
でも何かあった時は重宝したんだ。
俺はもう一度傘に目をやる、特に物言うこともない。
ただの色褪せた傘だ。
俺は傘を捨てる。
その瞬間から傘はただのゴミとなった。