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『旅』
果てなき田んぼ、どこまでも続いていく道。
以前他人様の家を朝から晩まで駆け巡り、その辺で買える商品に様々な付加価値を付けて販売したことがある。
それはもうあらゆるストーリーや、生活のためになるかわからない機能。
時には家主に怒鳴られ、時には独り身の寂しい老婆に感謝されたりもした。
歩く足取りがとても重かったことを覚えている。
そして今、また何もない田舎道を歩く。
あの時と似た感覚がよみがえってくるが、今度は誰に怒鳴られることも誰に感謝されることもない。
不思議と今は幸福を感じるのだ。
ただ一つ愚痴があるとするならば、ビジネスシューズで来たことだ。
それはやがて自嘲へと変わり、次回はスニーカーを履くと決めてまた一つ歩を進める。
その足はとても軽やかだった。