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君の"エガオ"を奪うまで If  作者: 夜の塩焼き
原型、正規世界線
9/11

幼体化パロ

「…というわけだからさ。この子たちの面倒見てやってくんない、(まだら)?」

「うん、とんでもなく自業自得だし、何でこっちにその話が回ってきたのかがわからないね。がんばって、ぱーぱ」

「けち〜〜〜!頼めるの斑しかいないってわかってるくせに!!」


僕の目の前には、三人の子供がいた。

一人は、今ぎゃんぎゃん騒いでいる青い目の少年。

一人は、美しい金髪の少年…こころなしか、こちらを睨んでいるようにも見える。

最後の一人は…そんな彼の後ろに守られるようにして隠れている、銀髪の少年だった。

うん、なるほど。間違いなくアザレアくんと夜空くんだね。


時さかのぼること10分前。研究室の戸口をたたいて現れた蒼の話によると、夜空くんが盗んできた『不思議』の効果で、二人が幼体化してしまったということだった。おまけに今までの記憶もないらしく、手に負えない状態だったのだとか…


「僕とアザレアの相性が最悪なんだって〜!僕もアザレアも不思議じゃない?んで、僕は共心者なし、アザレアは居る!!そんなもんだから、アザレアずっっっっっと僕への警戒解いてくれないの!!」

「そうだろうね。不思議は本能的に共心者を守ろうとするから。無理もないね」

「だからよ!!斑んとこならサファイアしかいないし、サファイア自体も温厚じゃん?だから大喧嘩にはならないと思って…」

「なったんだ?」

「うちの翠がね!!!!斑も知ってるでしょ、あいつの面倒くささ!!」

「あはは!翠くんは相変わらず元気なんだね。安心したよ」

「笑い事じゃない!!おかげでアザレアの他の不思議への不信感はうなぎ上り!アスファルが帰って来てくれなかったらどうなってたことか…」

「カフェの二人は?大体そういうことって、まずはそっちに行くだろう?」

「今日は定休日でお出かけしちゃってんの~…行ったらもういなかったよ…」

「なるほどね」

「ねえ、だからお願い!!多分1日2日で元に戻ると思うからさ!君たち二人の子供だと思って!!」

「……僕たち二人の子供、ねぇ…」


ちらと隣に目をやる。そこには、僕の幼妻…サファイアが、小さな二人のことを興味津々のまなざして見つめている姿があった。


「…どうするサファイア。『ママ』だって」


柔らかな金系の髪が、まるで生き物のようにぴょんと跳ねる。そのまましばらく視線をうろつかせると、やがて頬を少し赤く染めながらこくりとうなずいた。


「…預かりたい?」

「(こくこく)」

「…しょうがないなぁ」


サファイアの頭を撫で、改めて二人に向き直る。話を聞くに、アザレアくんが僕やサファイアを睨んでいたのは気のせいではなかったようで、目線を合わせるようにしゃがみこめば、その目つきはさらに鋭いものになった。


「初めまして…じゃあ、ないんだけど…僕は、この研発室で、地質学…えーっと、地面の状態とか、鉱物について調べているよ。あっちは、僕のパートナーのサファイア。お祭しの通り、君と同じ『不思議』だ。彼女は声が出せなくてね。アクションが少し大きくなりがちだけど、悪い子ではないんだ。君たちと仲良くなりたいとも思っているようだし…よろしくね」

「結構です」


幼いながらも、意志の強さがうかがえる声だった。


「夜空さんは、ぼくが守ります。別の人の助けなんかいりません」

「そうはいっても、いつもとに戻るかもわからないんだ。ここは、君たちくらいの年齢の子たちだけじゃ、生きていけない場所だよ」

「そんなことないです。ぼくだって、ちゃんと戦えます」

「それはいいことだ。でも、それ以外はどうかな?」

「それ以外…って?」

「……あじゃ…」


ずっと後ろに隠れていた夜空くんが、アザレアくんの服の裾を引っ張る。もう片方の手で降っていたお腹から、くるくると可愛らしい音がした。


「あ…」

「…ぺこ…」

「…ね?」

「…………」


心なしかうるうるしている目に見つめられ、彼はとうとう根負けしたようだった。


「…夜空さんに何かしたら、許しませんから…」

「何もしないよ。さあ、サファイア。最初のお仕事だ。二人においしいご飯を作ってあげよう」


待ってましたと言わんばかりにサファイアは椅子から飛び降り、コンロのある方へと足早に移動していく。


「で、もちろん食材くらいあるんだよね?」

「はいはい出しますよ~…卵うどんとかでいい?」

「ふむ…夜空くん今いくつだい?」

「ん…」

「ん、おりこうさん…ふたつか…なら大丈夫だと思う」

「はぁい…じゃ、ちょっぱやで買ってきま〜す」


そういうと、蒼は瞬きをした瞬間に姿を消した。

さて僕は…とりあえず、相変わらず引っ付いて固まっている二人をソファまで誘導し座らせてやる…やっぱり、まだ緊張しているようだ。食事をして、少しでも気がまぎれればいいが…。


「ちょっと待っててね。ああ見えて、サファイアの料理は絶品だからさ」


さて…この二人が警戒を解くのが先か、元に戻るのが先か…そんなことを考えながら、僕も小さなお客さまにお茶を用意するのであった。

Twitterでやった企画の話

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