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君の"エガオ"を奪うまで If  作者: 夜の塩焼き
原型、正規世界線
7/11

ある王子の幸せな末路

「ーーア…ザ、ア……アザレア」


懐かしい声に呼ばれ、目を開く。

そこは、小鳥が鳴き、風が優しく流れる穏やかな場所だった。

…僕は確か…


「アザレア」


目の前に、いる人は…?


「…よぞら、さ…?」


僕の、会いたかった人…ずっと、最期まで、思い続けた人…


「夜空さん!!……夜空さん、夜空さん!!!」


起き上がり、そのまま抱き着く。声も、においも、体温も…全て、忘れていたはずのものが流れ込んでくる。

夜空さんだ…夢じゃない?いや、だって僕はもう死んだはずだ。

なら今のこれは?白昼夢…?走馬灯…?なんでもいい。夜空さんが…僕の前に、夜空さんがいる…!


「アザレア…ごめん。連れてってあげられなくて、ごめんな…」

「ほんとですよ!!なんで置いて行ったんですか!!ひどいです!僕ずっと、ずっと寂しかったんですよ!!夜空さんがいなくて、夜空さんが、一人で行っちゃって、いなくなっちゃって…!」


その後も、僕は夜空さんに自分の感情をまくしたてた。怒りも恨みも、悲しさも、悔しさも、全部…そのどれも、夜空さんは相槌を打ちながら聞いてくれた。

口数の少なさが、ただうなずいて話を聞いてくれるこの感じが…何から何まで、懐かしい。


「…僕、魂がない存在だったので…もう二度と、夜空さんには会えないと思っていました。夜空さん、今は旭陽さんとして生きていますし…」

「.…その旭陽が、粋なことしてくれたから。だから、会えたんだと思う」

「粋…?」

「…お前、何回か名義変えて、俺が生きてた頃の話書いたろ?…それに影響受けて、小説家になったんだよ、あいつ」

「…もしかして…」


心底うれしそうな顔をして、彼はうなずく。


「自分と、お前が過ごした日のことを書いたんだ。そのオチで、俺と再会させた」

「え…じゃあ、今僕の前にいる夜空さんは…」

「そうだな。本来なら、物語上で作られた、別の夜空だ。でもお前は…「不思議」であるアザレアは、俺が作り出したも同然のものだった。それから…俺は、最期までお前に呪われていた」

「そ、そうだったんですか…!?」

「最期の最期まで、俺のことを思ってくれていた。って言った方が、正しいな…だから、こうして俺は、お前に惹かれてこにに来られた」

「…じゃあもう、僕はこれから、夜空さんと、ずっと一緒ですが…?生まれ変わるまで…?」

「……それなんだが…」


申し訳なさそうな顔をして、続ける。


「...俺は、旭陽に生まれ変わったわけじゃない…俺はもう、生まれ変われないんだ。呪われすぎて」

「……?じゃ、じゃあ…僕はどうして…?」

「…あいつは、夕飛だ」

「夕飛さん!?」

「俺と夕飛は双子だった。双子は、同じ魂が二つに分かれて生まれる…つまり、だ」

「…僕は、夕飛さんに戻してもらうことも可能だった…と…?」

「…ごめん」


一瞬あっけにとられる。それじゃあ、あの時、夕飛さんに言ってもらえば、僕は…?


「…最低です」

「…ごめん」

「……でも…結果的に、僕は旭陽さんに話を書いてもらわなければ、夜空さんには会えなかったってことですよね…?」

「そうだな...俺も、そこは失念してたけど」

「……なら、ちゃんと生きた甲斐がありました」

「…でも、辛かっただろう?」

「それは…辛かったですよ」

「……晩年にもなったら、もう少し落ち着くかと思ってた……けど」


不意に、顔をあげさせられる。目の前には、最後に見たときよりずいぶん若い…出会った頃そのままの、夜空さんの顔。


「…逆に欲が出た。俺のことを、ずっと思ってほしくなった……ごめん」


何かを答える前に、口をふさがれる。

少し痩せた、柔らかい唇…夜空さんの唇だ。

触れただけで離されたそれがじれったくて、今度は僕から引き寄せる。


「その欲張りは…生きている時にも発揮してほしかったです」


そのまま抱きしめて、キスをして…久しぶりに、恋人同士でしかしないことをした。

そのどれも、何もかもが変わらなくて、当時のままで…

気が付いたら涙が出ていて、それをぬぐって、また笑って…ああ…なんて、幸せなんだろう。


「大丈夫…また目が覚めたら、ここにいるから」


眠りにつく前、優しく頭を撫でられる。その手にすり寄れば、また触れるだけのキスを返してくれる。


「おやすみ、アザレア…愛してる」


ああ…どうか、どうか…この夢が覚めませんように。

ボツになったif展開


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