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レッツチャレンジスーサイド!

(屋上に来てくれませんか)

 こんなに心躍らないお誘い初めて見た。待たせたら勝手に自殺しそうだから早く行かないと。

「どした?」

「ごめん、意与くん。呼び出し受けたから行ってくる」

「おう、いってら〜」

 教室から出て、急いで屋上へと向かう。

 途中なぜか黒板用の三角定規を運んでいた女子とぶつかったが、構わず屋上へと向かった。

 屋上に佇んで、今すぐにでも自殺しそうな老違さんに声をかける。

「お、お待たせ!」

「遅かったで…うわ」

 老違さんが信じられないような目つきでこちらを見てくる。

「な、何か僕の顔についてる?」

「顔というか…頭に」

「頭に?」

「三角定規が」

「へ?」

 頭から生暖かい液体が垂れてくる。その液体は鮮やかな赤色で、思わず顔を顰めてしまいそうな鉄の匂いがする。

「ど、どんなふうに刺さってる…?」

「30°の部分が、ざっくりと」

「ぬ、抜いてくれませんか」

「…………仕方ないですね」

 老違さんはすごくめんどくさそうな顔をしながら頭の三角定規を抜いてくれた。普通だったら大量出血しそうなものだが、彼女が抜いたおかげで血が噴き出すことはなかった。

「た、助かった。ありがとう」

「ほんと、羨ましい限りですね」

 この力を交換できればどんなに良いだろうか。いやでもこの人に目の前で死なれたらトラウマになりそうだ。

「それで、屋上でなにやるの?」

「もちろん自殺です」

「もちろんでやっていい内容じゃないよ…」

「今回はオーソドックスに飛び降りをしましょう。ここ数日で7回ほど失敗していますが、今回はあなたがいますから何か変わるかもしれません」

 色々と聞き捨てならない言葉が耳をすり抜けていく。

「自殺を趣味レベルでやらないでよ」

「どちらかというと自殺は夢ですね」

 やだな、将来の夢の欄に自殺って書く人。

「じゃあ早速飛び降りますか」

「え、僕も?」

「そうですよ。じゃないと恩恵を受けられないじゃないですか、お互いに」

「た、確かに?」

 なんだか上手く丸め込まれてしまった気がする。

「じゃあ飛び降りますか、あっちのフェンスの方が登りやすいですよ」

 老違さんは手慣れた手つきでフェンスをするすると登る。普段からここのフェンスを登っていなければできない熟練の動きだ。

「ほら、早く」

 フェンスを上るのは小学生以来だ。あの頃は高いところを目指して何でもかんでも登ろうとしていた。目的はどうあれ、この行為は自分の童心を少しだけ蘇らせた。

「わ、たか…!」

 フェンスの1番上から見える景色はなかなかに良いものだった。どうやら自分の中の高いところに行ってみたいという心は消えてはいなかったらしい。ネコのように澄んだ瞳で景色をじっと見つめる。

「見惚れてないで、早く降りてきてください」

 痺れを切らした老違さんが僕を急かす。

「あ、ごめ…」

 フェンスから降りようと屈んだ瞬間、頑丈そうなフェンスがガシャリと音を立てて根本から折れた。

「は…」

 老違さんが咄嗟に手を伸ばし僕の腕を掴む。そのまま老違さんは踏ん張るでもなく、水が流れ落ちるかのように僕と落ち始めた。

「うわぁぁぁ!?」

「今回はうまくいくといいですね」

「慣れすぎじゃない!?」

「今回は風もなし、落下ルートに窓もありません、その落下先周辺にクッションになるようなものは存在しません。完璧です」

「それって僕もやばいのでは!?」


その頃一方落下先…

「完成したわ!この音仕上 鳴々子(おとしあ  ななこ)の傑作落とし穴!どこからどう見ても普通の地面!それに人間の体重にしか反応しないように設計してるから誤作動の心配もない!落とし穴に落ちて怪我をしないよう、中に最高級超ふわふわマシュマロクッションをこれでもかってくらい詰め込んであるからたとえ屋上から落ちても傷一つないわ!完璧よ!さぁ誰か哀れな子羊よ私の落とし穴の犠牲になりなさい!」

「ぁぁぁあああ!!」

「ん?」

「ギャン!」

 衝撃と共に土埃が辺りを包む、骨の一つぐらい折れるかと思ったが柔らかいものに包まれ、傷どころか痛みさえなかった。

「なんだこれ…クッション?」

「………」

「引っかかったわね!このあたしの最高級落とし穴…に?」

 穴から這い出た老違さんの顔は鋭利な剃刀のような表情を浮かべ、自殺どころか人を殺してしまいそうな雰囲気を感じる。

「だ、誰かしらこんなところに落とし穴を設置した天才美少女は!?先生に報告してこないと!」

 そう言って、おそらく落とし穴をここに作ったであろう女性はすごい速さで逃げ去ってった。

「あの…老違さん?」

「この人の力より、私の呪いの方が強い…」

 わぁ、不機嫌そのものみたいな顔をしてる。あんまり刺激しないほうがいいな…

 落とし穴から抜け出し、老違さんにバレないように忍足でその場から離れようとする。

「ん?」

 よく見ると、老違さんの右手から血が垂れてきていた。

「老違さん、右手怪我してるよ。保健室行ってきたら?」

「え…?

 彼女は自分の右手を見て、かなり驚いたようだった。

「こんな怪我、今までしたことがない…」

「自殺はしようとしてるのに、怪我はしたことがないの?」

「今までどんな小さな傷を作ろうとしてもこの呪いによってできなかったんです。それがこんなに血が出て…」

 老違さんは傷を見て今までに見せたことがないような笑顔を見せた。彼女の意外な表情に思わずドキッとする。

「今日は収穫がありましたね。次回もこの調子でお願いします」

「え、あ、はい」

「とりあえず今日の挑戦はここまでにしておきましょう。あなたの力も今日は鳴りを潜めるでしょうし」

「ほんと?」

 今日一日の平和が約束されたのは嬉しいが、傷を見て嬉しそうにしてる老違さんを見てたら不安になってきた。

「出血多量……破傷風…」

 なんか怖いことを呟いてるし。

「とりあえず教室に戻ろう。もうすぐでチャイムが鳴るかも…」

 そう言い終わったところでチャイムが鳴り始めた。

「まずい、急ごう!」

 まだ傷を見てニヤニヤしている老違さんと共に教室へと走る。なんとか授業開始には間に合ったが、教室が老違さんの傷によってざわついたのは言うまでもない。


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