第7話:入学試験(5)
午後になり、二次試験が始まった。
二次試験は、実技試験だ。
実技試験では、攻撃魔術の威力を計測する。
攻撃魔術は、魔術の中では最もシンプルなので、クリスタリア魔術学院の受験生であれば、誰でも発動できる。
試験会場には、大量の的が設置されていた。
「アレクさん……筆記試験の結果はどうでしたか?」
ユリカの表情は青ざめていた。
どうしたのだろう?
「筆記試験は30分で終わったよ。多分満点だな」
「うう……うらやましいです。私は鉛筆を転がして、なんとか全部埋めましたけど、全然自信ないです……」
「ユリカは回復魔術が使えるんだろ? それなら、三次試験で巻き返せるよ」
「私……攻撃魔術も苦手なんですよね……」
ユリカは緊張してガチガチになっていた。
魔術を詠唱する際は、精神を安定させることが必要不可欠だ。
魔術学院のカリキュラムにも、メンタルトレーニングは組み込まれている。
このままだと、ユリカは詠唱に失敗してしまうかもしれない。
「落ち着け、ユリカ。二次試験で重要なのは威力だけだ。魔力を込めて、思い切り的を吹き飛ばせばいいんだよ。ユリカの魔力量なら、小細工抜きで大丈夫だ」
俺は賢者なので、滲み出るオーラから魔力量を推測することができる。
ユリカの魔力量は、受験生の中でも上位だ。
「……あ。私の番ですね。行ってきます」
「ああ。応援してるよ」
ユリカは、緊張した面持ちで進み出た。
「……い、行きます。【エクスプロージョン】!」
ドカーン!!!!!!!
爆音が響き渡り、的の大半が爆散した。
「凄いじゃないか! 想像以上の威力だよ!」
「えへへ、やりました。私、爆発魔法は得意なんですよね! スッキリしました!」
ユリカは、緊張から解放されて、満面の笑みを浮かべていた。
ユリカの次に、セレナの番が巡ってきた。
「ねえ、この試験って、あの的を全部破壊すればいいんだよね?」
セレナは、無邪気な表情で試験官に質問した。
「……は、はい。セレナ様、危ないことはしないでくださいね……」
試験官は、楽しそうなセレナを見て、冷や汗を流していた。
エルフの魔法は強力であり、場合によっては防護用の結界を貫通してしまう場合がある。
非常事態に備えて、試験官は防御魔術を追加した。
「失礼だなぁ! 私だって、ちゃんと手加減くらいできるよ! 【インビジブルブレイド】!」
セレナの詠唱によって、不可視の刃が現れ、全ての的をバラバラに破壊した。
インビジブルブレイドは、無属性の最上級魔法だ。
「アレク君が見てる前だから、ちょっとだけ本気出してみたよ?」
俺の元へ、セレナが駆け寄ってきた。
「ああ、流石エルフだな。凄かったよ」
「次は、アレク君の本気を見たいなぁ。期待してるからね?」
「……了解」
実力は隠しておく予定だったが、セレナの機嫌は損ねたくない。
俺も、セレナを見習って、ちょっとだけ本気を出すか。
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