第4話:入学試験(2)
「3・2・1――0」
機械音声によるカウントダウンが終了し、攻撃制限が解除された。
「どうした? 来ないのか? 先手は譲ってやるよ」
決闘では、相手の出方を見てから動ける後攻が有利なのがセオリーだ。
だから、俺はデブ貴族を挑発した。
どんな雑魚が相手でも、俺は手を抜かずに最善を尽くす。
「貴様ぁぁぁぁ! これでも食らえ! 【ファイアボール】!」
そう言うと、デブ貴族は特大のファイアボールを投げてきた。
何も防御しなければ、俺は丸焦げになるだろう。
この年代で、これだけ高出力を発揮できるなら、将来は有望だ。
デブ貴族は女好きのクズだが、受験勉強は真面目にしていたようだ。
だが――最強賢者である俺には通用しない。
「【ディスペル】」
俺はカウンター魔術のディスペルを詠唱し、ファイアボールを打ち消した。
「ば、馬鹿な! この僕のファイアボールを打ち消しただと! 貴様――何者だ!」
カウンター魔術は、彼我の実力差が大きい時しか成功しない。
同程度の実力であれば、魔術発動を見てから、カウンター魔術を詠唱して間に合わせるのは不可能だ。
「俺かい? ただの平民だよ。【スタンボルト】」
俺はスタンボルトを命中させ、デブ貴族を気絶させた。
決闘が終了し、決闘フィールドが解除される。
デブ貴族は、気絶したまま路地裏に転がしておいた。
この辺りは学生街で、治安は良いので、放置しても死ぬことはないだろう。
「ありがとうございます! 助かりました! すごく強いんですね!」
大喜びで、美少女が抱きついてきた。
服越しに、柔らかい胸の感触が伝わってきた。
「お、おい。離れてくれ!」
「……あ、ごめんなさい。迷惑でしたよね……」
少ししょんぼりして、美少女が俺から離れた。
「せっかくだし、自己紹介しようか。俺はアレク。平民さ」
学園生活には、青春らしい潤いが必要だ。
この美少女との縁は、大切にするべきだろう。
「私はユリカです。戦うのは苦手ですけど、回復魔術は得意です!」
ユリカは、桃色の髪をツインテールにまとめた美少女だ。
胸はとても大きく、身体の線を隠す見習いローブ越しでも、はっきりと胸の膨らみが見て取れる。
回復魔術は難易度が高く、受験生の中でも回復魔術を使える者は希少だ。
「そうなんだ。ユリカは凄いな」
「アレクさん、さっきまで決闘してましたけど、怪我はないですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
こうして、俺たちは受験会場へと向かった。
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