第3話:入学試験(1)
今日は、入学試験の日だ。
俺は宿を出て、クリスタリア魔術学院に向かった。
現在、俺は目立たないように魔術師見習い用のローブを着て、手には魔術師見習い用のヨロギの杖を握っている。
普段は、世界樹の枝から作った最高級の杖を使っているが、そんなものを一般学生が持っているのは不自然だ。
なるべく目立たないように、ひっそりと学院生活を過ごそう。
胸には、平民であることを示す、星なしのバッジを付けている。
このバッジは、貴族であれば家柄や実力に応じて☆☆☆☆☆~☆で分けられ、平民には星なしとなる。
クリスタリア魔術学院は、実力ある者であれば誰でも受験資格があるが、それでも平民と貴族ははっきりと区別されており、平民は様々な面で不利となる。
それでも、他の五大校が完全に平民を拒否する中で、クリスタリア魔術学院だけは平民でも普通に受験できるので、文句は言えないだろう。
俺としては、卒業して学歴を取得できるのであれば、些細な待遇の違いはどうでもいい。
辺りを見渡したが、大半の受験生は星ありの貴族ばかりで、星なしの平民はほとんどいない。
五大校の受験は難易度が高いので、クリスタリア魔術学院であっても、受験生の大半は、幼少期から厳しい受験勉強を乗り越えてきた貴族の子息だ。
……ん?
道を歩いていると、路地裏から悲鳴が聞こえた。
トラブルだろうか?
路地裏を覗くと、デブの男子受験生が、美少女に杖を突きつけていた。
「おい、何をしてるんだ?」
「クヒヒ……、これは☆☆☆の僕が、☆のクズ貴族の娘に教育的指導を行っているだけだよ。☆なしのクズは、今すぐ立ち去ってくれ。今なら、無傷で見逃してあげるよ」
デブ貴族は、口元に気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「……こ、こんな所で脱ぐなんて無理です! 助けてください!」
そう言って、美少女は俺の背後に隠れた。
……どうやら、このデブ貴族は力ずくで美少女に乱暴しようとしているらしい。
入学試験の前なのに、何を考えてるんだ?
「おい! そこをどけ! 邪魔をするなら、お前ごとブッ殺してやる!」
「ん? 俺と戦いたいのか? 決闘なら大歓迎だよ」
最強賢者として、俺は決闘で何度も勝ち抜いてきた。
こんな馬鹿相手に負けるはずがない。
そう答えると、デブ貴族は即座に手袋を投げてきた。
決闘が成立し、辺りに決闘フィールドが展開される。
こうして、決闘はスタートした。
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