第1話:追放
「アレク、お前はクビだ!」
朝、出勤早々、俺はユロム大臣からクビを告げられた。
「……どういうことだ? 理由を説明してくれ」
現在、俺はモクシリ王国の宮廷魔術師として働いている。
1人で王国中の必須インフラを維持管理し、絶えず湧いてくるモンスターを討伐する忙しい仕事だ。
「理由? それはなぁ……お前が低学歴だからだよ! お前の学歴は、幼少期に通った教会学校だけ! 魔法関連の学歴は何一つない! おかげで、儂が何度他国から馬鹿にされてきたことか! だが……そんな日々ももう終わりだ! ようやく、ちゃんとした学歴の宮廷魔術師を雇える目処が立ったから、お前はもう用済みだ!」
モクシリ王国は貧しく、以前は宮廷魔術師を雇う余裕がなかった。
しかし、俺の奮闘により、経済情勢はだいぶ上向き、ようやく国民は他国並みの標準的な生活を送れるようになった。
俺は独学で魔術を学び、自力で賢者まで到達したが、魔術界では異端の嫌われ者であり、なかなか就職先が見つからなかった。
どうやら、俺が原因で、モクシリ王国は外交面で不利な立場に立たされているようだ。
貯金は十分にあるので、しばらくは問題なく生きていける。
後任も見つかっているようだし、ここは潔く身を引くべきだろう。
「了解。それなら、俺は仕事を辞めるよ。後任用にマニュアルを置いていくから、ちゃんと渡しておけよ」
「マニュアル? そんなもの必要ない!」
大臣は渋々、分厚いマニュアルを受け取ったが、本当に後任に渡してくれるかどうかは分からない。
モクシリ王国のインフラは、俺が維持することを想定してチューニングされているので、俺の後任で来た宮廷魔術師は苦労するだろうが、俺には関係のない話だ。
せめて、優秀な人材が来るように祈ろう。
こうして、俺は王国を追放された。
「面白かった」「続きが読みたい」などと思われましたら、
ブックマーク・評価・いいねをして頂けるとモチベーションが上がります。