缶コーヒー転生
※この物語は『第四回なろうラジオ大賞』投稿作品です。
我が輩は缶コーヒーである。名前は、カズヒコ。
元人間だ。
転生したら缶コーヒーでした!
なぁあんでだよぉおお!
一か月前の事だ。
珍しく鬼女上司がくれたコーヒー片手に寝ぼけ眼の帰宅中に、大地震が起き、地面が割れ、そこから化け物が洗われ、俺は謎の能力に、目覚めることなく半身喰われて死んだ。
そして、死の瞬間、声が。
【称号、はじまりの犠牲者、獲得。ボーナス、チート転生】
(なんだって……チート転生!? じゃあ、頑丈で不老不死の身体、超能力とか魔法使いたい、あと、何がいる? やべ、ねむ……えーと、なんだ? 起きてちゃんと伝えないと……だめだ、眠い、寝たくねえ……な、に、に、なりたい、か……ふああ、そうだ、さっきの缶コーヒー……)
そして、俺は死んだ。で、缶コーヒーになっていた。
なあんでだよぉお!
だが、しかし、諦める俺ではない。
俺はこの身体で生きていく事を決めた。
そして、前向きになった俺は、まあ、どっちが前かもわかんないんだけど、気付いた。
チート能力はあったのだ。
超能力で自分の身体を動かせるし、テレパシーで会話できる!
問題は受け入れてくれるかどうか!
だから、今日も俺は受け入れてくれる人と共に戦う。
「いくわよ! コーヒーくん!」
『はいよお!』
今日の相手は、明里さん。
明里さんは俺を握って思い切り魔物に投げつける。
俺は自分で勢いを強くし、方向を微調整し、魔物にぶつかっていく。
そして、見事命中。
膝をつく魔物。
それを見届けると明里さんは言う。
「コーヒーくん、追撃をお願い!」
『まかせな! 行くぜ青の山!』
俺は詠唱破棄で一瞬で氷山を生み出す。
『まだまだ、緑の山!』
更に、魔物を地面から生やした木々で縛り付け魔力を吸って枯れさせた。
「やったね、コーヒーくん!」
笑顔を見せる明里さん。
『あの、明里さん……よかったら、俺の珈琲を飲んでくれないか……?』
「えっ?それって……」
少し顔を赤らめながら明里さんは聞いてくる。
「わ、わかったわ」
彼女は俺に手をかける。
「んっ……! ダメだわ。やっぱり私には無理みたい」
『そ、そうか……』
実は、オレは、勇者の珈琲らしい。
選ばれし者だけが飲むことが出来、そして、覚醒させることが出来るらしい。
だが、未だ誰も俺を開けることが出来ない。
「ごめんね、私じゃダメみたい……さよなら」
『明里さーん!』
俺はまた新しい使い手を探し続ける。
勇者の珈琲として。
お読み下さりありがとうございました。