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公爵子息のお世話係  作者: 深町 透子
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番外編 -子爵の独り言-

エリーの父、ウォレス子爵の独り言です。

 皆様、お元気ですかな?


 私はウォレス子爵サムエル、またの名を王宮勤めのしがない文官と申します。私が勤めているのは、王宮の中でも華やかさとは最も縁のない史料室というところです。ただ、歴史好きにはここは天国ですぞ!王国のみならず、世界各国の歴史書が揃っておりますのでね。中には大変貴重な初版本もありますので、扱いには十分に注意しないといけません。そもそも、王国の成り立ちはウンタラカンタラ…。


 おっと、歴史の話を始めると止まらなくなってしまうところでした。申し訳ない。




 その話はまた後でするとして。




 我が家には娘と息子がいましてね。娘は長く一人娘だったため少々我儘でしたが、明るくとてもかわいらしい娘でしたよ。将来は婿を取って跡を継いでもらうつもりだったのですが、娘が9歳のときに思いがけず跡継ぎの息子に恵まれましてね、我が家はお祝い気分で浮かれておったのですよ。でも、娘は自分に向けられていた愛を弟に取られたと思ったのでしょうな。ふと姿が見えなくなって、みんな蒼白になって探し回りました。明け方になって庭の茂みの中で娘を見つけたのですが、体調を崩してそれから2週間ほど寝込んでしまいました。決して娘のことをないがしろにしたわけではないのですが、子供心に何か感じるものがあったのでしょうな。もちろん、私たちは深く反省していますし、あの時のことを思い出すと今でも胸が痛みます。




 でも健康になってからは、まるで母親のように弟をかわいがってくれました。まあ、何人か子供を育てたことがあるかのような手際の良さで、みんな不思議がっていましたが…。息子も姉である娘によくなついていましたよ。




 その後、縁あって雇っていただいた公爵家で、娘は周りの方に大変かわいがっていただいたようです。そして、時々送られてくる手紙に子息様のことがよく書かれておりました。年の離れた弟と重ねていたのかもしれませんな。




 最近やっと息子が学院で学ぶための費用にもめどがつき、娘は公爵家を辞してまた家族一緒に暮らすつもりだったのですが、青天の霹靂とでもいうのですかな、なんと公爵閣下直々に子息様と娘の婚約を申し込んでこられました。まあ、公爵閣下ともあろう方があのような大衆食堂に気軽に行かれるとは思ってもみませんでしたがね。(お代は公爵閣下がおごって下さいましたよ。さすが公爵閣下、太っ腹です。)子を思う気持ちは、身分に関係ないというところですかな。周りからの視線はちょっと痛かったですがね。




 私たちの一番の望みは、娘の幸せです。年齢不相応に大人びたところがあった娘ですが、やはり若い女性の身で苦労したことも多かったはず。子息様は年若いお方ですが、学院を飛び級で卒業なさり、厳しいと評判の騎士学校も最短の2年で出られ、王族の方々からの覚えもめでたいとか。きっと娘を幸せにしてくださることでしょう。私も、娘に恥じることのないよう、何事も誠実にやっていきたいと思っております。




 さあ、まずは史料室の整理整頓から取り組むとしましょうかな!

次話で完結です!

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