72:厄介な奴
(´・ω・`)2月22日だから22時に予約投稿。22分は勘弁な。
「というわけで頼れるスーパーメイドのアイリスに質問だ」
「なんなりとどうぞ」
ふんすと胸を張るアイリス。
さっきまでの不機嫌は何処へ行ったのか?
「予知能力への対処法はあるか?」
「現状御主人様が取れる対策は皆無に等しいと断言します。予知能力者は未来の情報を得て動きます。よってこちらがどれだけ備えていたとしてもそれを容易に突破する点が厄介です。もっともそれができるだけの強力な能力者であることが前提となりますが……」
「サイオン教会が追手を放つレベルとなれば言わずもがな、か」
その通りでございます、とアイリスは優雅に一礼。
「余計な事に首を突っ込んでくれやがりましたね」と冷たい目をしたアイリスが付け加える。
どうやらこの件は簡単には許してくれなさそうである。
そう思っていたところ、溜息を吐いたアイリスがサイオニック能力には脅威度が設定されており、今回は最悪の事態を引き起こす可能性はまだ低いと教えてくれた。
「未来予知にも幾つかあります。『こじ開けられた』という言葉を信じるならば、自分の意思で望む先を見通す力ではないでしょう。その力が強力であるほど以前話した対価も大きくなる。おまけに殺害が極めて困難となります」
「物騒だな……そうでなかったのが幸いか」
安堵で胸を撫で下ろす俺にアイリスが一言。
「御主人様。相手は予知能力者です」
しばしその言葉の意味を考え、即座に答えが出た俺は何故アイリスがそこまでしてアッカフを始末したがっているのかを理解した。
「……こわ。予知能力者ヤバすぎないか?」
俺が辿り着いた答えは「そう答えることで生き延びることができる」と知っていたパターン。
となれば、俺を巻き込むために接触を持っていた可能性が高い。
さらにはフォーネイがアッカフの指示通りに動き、俺が誘導されていた可能性も考えられる。
「それが最悪のケースです。もしそうであるならば今後も利用され続けることは間違いありません」
「その場合、今回の件は俺に落ち度なくない?」
どうやって未来情報持ってる奴からの誘導に対処しろと言うのか?
そもそもそれが無理だと言い切ったのはアイリスである。
「ただの八つ当たりですが何か?」
「オブラートに包む努力くらいしてくれる?」
この返しには流石の俺も苦笑い。
しかしながら命を粗末にするかのような言動の部分は俺に問題があることには違いない。
「反省点と今後について話し合う必要がある」と建設的な意見を出したところでアイリスも渋々頷き、今回の件は本当にこれにて終了となる。
「しかし本当に厄介な相手に目を付けられましたね」
「一応お前がいるから巻き込まれている形なんだが?」
どう考えてもサイオンの騎士を相手にできるのは機械知性体のアイリスくらいなものである。
ならば俺を巻き込む形でアイリスを追手にぶつけるのが目的となる。
ペチペチと俺の頭部を掴むアイリスの腕を叩きながら「暴力反対」と連呼する。
「まったく……ゴミはゴミ同士で争えばいいものを」
毒を吐くアイリスに解放された俺が疑問を一つ口にする。
「なあ、予知能力があるならなんで追手に追いつかれたんだ?」
「サイオン教会にも予知能力を持つ者がいるからです。あの女男が逃げ出した理由は『次』にされることを知ったからでしょう。だからその能力の高さが予想できるのです」
「次?」
アイリスは語る。
サイオン教会の深奥には「柱」があり、その柱とやらは予言を与えるのだそうだ。
ここまで聞けば察しもつく。
「サイオン教会は予知能力者の脳を取り出し道具に作り変えます。当然生体部品という扱いになりますので寿命がございます」
「……で、その部品の替えになりたくないからアッカフは逃げ出した、と」
「爆破したと聞いた時は『よくやった』と思いましたが……追いつかれているということは失敗したということですね」
役立たずが、と吐き捨てたアイリスが俺を見る。
「御主人様。サイオンの柱の状態次第ではあの女男に派遣される追手の数と質が増えるでしょう。そしてその都度生き延びるために巻き込んでくる可能性が十二分に考えられます」
続く言葉が予想できただけに俺は何も言えなかった。
「そろそろなりふり構わず強くなることを推奨します」
「具体的には肉体強化か? それとも機械化か?」
「いっそのことハイブリッドでいいとこどりを目指しますか?」
しばらく考えた後、最終確認として他の手段を尋ねる。
訓練に費やす時間を増やしたところで猶予はなく、才能もない俺では生き残ることは難しいだろうとはっきり言われた。
「実はこうなることがわかってて誘導されている、なんてことはないよな?」
機械知性体の技術力を以てすれば可能と思えるのだからこの疑問は仕方ない。
「御主人様。疑うことは結構ですが我々はそこまで暇ではありません」
「できないとは言わないんだな」
当然です、と胸を張るアイリス。
大幅な強化は必須事項。
だとすれば、どちらを取るかなのだが……どちらを選んでも後悔する気がしてならない。
「まだ運送業を始めたばかりだというのに……なんでこんなラスボス級の能力持った奴とかかわらねばならんのだ」
肩を落として愚痴を吐く俺。
アイリスは冷ややかな目で「御主人様はどうしてこうも最悪な選択ばかりを選び続けるのでしょうか?」とこれ見よがしに溜息を吐く。
「こっちが聞きたいよ」と溢す俺にまたしてもアイリスは溜息を吐いた。
一方その頃――フライングキャットの輸送艦では、一人の少女が必死に弁明していた。
「待った。待って、待ってください。こっちの言い分も聞いてください」
軍の事情聴取からようやく解放され、一目散に船に戻った彼女なのだが……そこで待っていたのは仲間たちからの冷たい視線。
そのまま首根っこを掴まれ、とある一室へと連行される。
「ボス。戦闘はないって言ってましたよね?」
「言った。けどホワイトナイトと戦おうとする馬鹿がいるとは思わなかった」
完全に予想が外れた旨を正直に話す彼女だが、仲間の二人は納得がいかない様子である。
「わかってるよ! ノス、妨害装置は?」
「起動中。アルマ・ディーエでも覗けない」
その一言に大きく息を吐いた彼女は大きな声で叫んだ。
「アホか! サイオンの騎士と生身の人間が戦闘とか誰が予想できるか! 見えてる未来と未来の間の出来事が意味不明すぎるわ! しかも何でアルマ・ディーエが戦闘に参加してるんだよ! そこは引くはずだっただろ! 未来変わってんぞ!」
肩で息をする彼女を見つめる腕を組む大きな女性が尋ねる。
「心当たりは?」
「全くない! むしろフォーが何か失敗した可能性を疑ってる」
「……戦闘が絡んでいるからゼロじゃない」
腕を組むフォーと呼ばれた女性――フォーネイが目を逸らす。
もしかしたらタイミングがズレていたのかもしれない、という結論で一先ず落ち着いた彼女たちだが、それでも今回の一件は予想外が過ぎた。
「まさかフラメンツが殺されるとは思わなかった。ホワイトナイトの序列7位だぞ? アルマ・ディーエはどうなってんだ?」
「むしろエバンスがアルマ・ディーエのヤバさがわかってないのが驚き」
「アッカフ、だ。ノス、誰も聞いてないだろうけど迂闊だぞ」
「はーい」と軽い返事をするノスにアッカフは頭を掻く。
「しかし捉えようによってはホワイトナイトが一名欠落したのは大きな一歩だ。上手く立ち回れば教会が手出しできなくなる可能性もある」
腕組を解いたフォーネイの一言でアッカフとノスは難しい顔をする。
「それなんだがな……まず間違いなくあのメイドには能力バレてる。教会の情報は持ってないと高を括ってたけど……クオリア舐めてたわ」
「つまり?」と首を傾げるノスに向かって大きな溜息を吐くアッカフ。
「あのアイリス、とか言ったか? あいつ、俺ごと殺す気満々だった。いや、ソーヤ君には助けられたわ……まあ、その状況に持って行ったのも彼なんだけど」
三人は顔を合わせて悩む。
白騎士という脅威から逃れるという目的こそ果たしたものの、当然その次がある。
そこにアルマ・ディーエという下手をすればサイオンの騎士よりも厄介なものが加わったのだ。
どうにかしなければならない。
だがどうすればよいのか?
「上手くソーヤ君を味方に引き込む……」
チラリとアッカフがフォーネイの大きな胸を見る。
「ゼロではないが、反応を見る限り厳しいな」
ならばと余り色気を感じさせないおかっぱ頭のノスを見る。
「こんなデータがあったりする」
そう言ってホロディスプレイに表示されたデータに映る「VIP仕様セクサロイド10体購入」の文字を見てよろめくアッカフ。
「ああ、ドール趣味か……だから機械知性体が傍にいんのね」
あらぬ誤解が徐々に広まりつつある中、彼女らはどうしたものかと頭を悩ませる。
未来予知というサイオニック能力を駆使し、生き延びてきた彼女たちではあるが、今回のズレが果たして自分達のミスに因るものなのか?
それともソーヤの馬鹿げた行動が原因なのかはわからなかった。
だがはっきりとしたこともある。
一つはサイオン教会と同等以上に厄介な存在に目を付けられたこと。
もう一つはそしてそんな危険な相手を利用しなくては生き残ることができない可能性が高いことである。
「ボス。それなり稼いだし解散というのは?」
「ダメ。俺の安全が確保されるまでは解散しません!」
「諦めろ、ノス。一応恩義はあるんだからできる限り付き合え」
見た目だけ女性を含む三人は今日もいつも通りに騒がしい。
まとめ
フライングキャット
船長:フォーネイ
船員:ノス、アッカフ
ボス:アッカフ(エバンス)
表向きはフォーネイがトップということになっている。




