表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不死者シリーズ

VRで永遠の眠りを・・・

作者: レリスタン

思いつきです!!


ああ、死にたい。


何かがあって死にたいわけではない。なんとなくだ。

仕事を探すのがめんどくさい。お金を稼ぐのがめんどくさい。買い物に行くのがめんどくさい。食べるのがめんどくさい。飲むのがめんどくさい。とにかくめんどくさい。何もしたくない。


本当に何かがあったわけではない。だが、何と言うのだろう?何もしたくないのだ。誰かの為に行動することが煩わしい。誰かの中には自分自身も含まれている。生きる為にしなければならないことは分かる。何もしないことは可笑しいことだろう。周りと比べても不可解なことだし自分自身もなぜ行動を起こさないのか分からない。


生物として欠如している存在はいらない。今の俺はただの汚物製造機だ。地球のリソースをただ無意味に消費しているだけだ。そんなゴミは綺麗に焼却しなければならない。


だから、死にたい。


でも、痛いこと、苦しいこと、辛いことは嫌だ。何とも我がままだがその恐怖(?)によって自殺に踏み込むことができない。極限までストレスを与えれば嫌でも自殺するようになるだろうか?だが、その過程がとてもつらいことには変わりなく、わざわざ自信を追い込む気にならない。何とも身勝手だ。


ああ、死にたい。


これで簡単に振り出しに戻る。ただ惰性で生活し大学を最低限の単位を取得して卒業してからは現実逃避をしている。今日も適当にパソコンを開いて動画を流しているのにも飽きた頃。なんとなく検索してみた。


<安楽死 苦しまない 手軽>


こんな検索結果で何も出ないだろうとそんなことを考えながら眺めていると自殺を止めるようなサイト以外にある項目がヒットする。


VR安楽死


VR、バーチャルリアリティー、仮想現実。AR、オーグメンテッドリアリティー、拡張現実とは違い仮想世界を現実に近づける技術。最初期に出たVRとは名ばかりのゴーグルのような機器をつけて行うARモドキではない。仮想世界に五感を共有し脳の電気信号でアバターを操作するここ数年使われるようになったもの。


身体に伝達する電気信号を遮断して仮想世界のアバターを操作するものもあるが最近は睡眠状態を利用したものが主流になりつつある。身体への電気信号を選択して遮断する機材が高度なモノであるが故にとても高額な機器になってしまい一般市民は手に入らない。最近主流の機器は簡単に言うと催眠術だ。ある一定の周波数を流すことで眠りにつく。その状態で夢を見るような形で仮想世界に入る。こちらの技術は以前のものよりも安価だ。それでも高額だが一般市民でも手の届く金額に落ち着いた。


俺も主流のVR機器は持っている。やる気が起きなくて放置していたがそのまま置いてある。検索してヒットした死に方はこれを使ったやり方なのだとか。VR機器を意図的に壊し安全装置を壊す。そこからは簡単、身体に異常があったとしても強制ログアウトにならないようにすることで苦しまずに死ねるのだとか。


俺は深く考えず、それを実行した。


VR機器を水没させる。水を張った風呂に突っ込んで引き上げ乾かした。電源を入れたところ通常であれば電源がオンであることの表示として緑のランプが点くのだが今は不規則に点滅している。どうやら故障したのだろう。それを確認した俺は頷く。


俺は最後の晩餐だと思いコンビニで好きな料理を購入し食べ尽くした。少し食べ過ぎた、いくつかは数口しか食べずに放置しているがどうでもいいかな?用もすまし思い残すことはない。早速、始めようと思う。


ドリームワールド・オンライン、夢世界。キラキラした未来を語る夢ではなく、寝ている時に見る夢。略称はいろいろあるから好きなように呼んでくれ。このゲームは主流となっている機器と同時に発売されたオンラインゲーム、VRMMORPGだ。他のタイトルも発売されているがほとんどのゲームがこのオンラインゲームの技術を転用して作られている。独自に開発してこのゲームの完成度を越えたものは未だいないというそんな伝説になりつつあるゲームだ。


最後の数日、餓死するまで飲まず食わずで3日か?長くても5日かな?まぁ、その間の暇つぶしとしてプレイするのにこれ以上のものはないだろう。ゲームデータはコンビニから帰ってからダウンロードを始めたからそろそろ終わるはずだ。確認すると問題なく終わっている。



相変わらず電源ランプは点滅していたがログインできた。薄い水色の空間だ。周りには特に何もない。


【キャラクターを作成してください】


キャラか~ どうしようか? どうせなら趣味に走って理想の女性でも作ろうかな?


参考資料に俺が好きなアニメやラノベのキャラが使えないか操作する。どうやら、ウェブ検索から参考にできるようだ。表紙やアニメの画像からいくつかのキャラが構成されていく。うん、このまま使ってもいい気がするけどどうせならもう少し好みの感じになるように手を加えていく。それぞれのキャラをいじり独り言を話しながら作成すること数時間。やっと納得のいくキャラができあがった。


身長は高くなく140あるか無いかぐらい。髪は長めで腰まで伸びているふわっとした感じ。目は若干たれ目かな?表情は眠そうな感じだ。鼻筋や口回り、目の位置などはいじっていない。胸や腰回りは慎ましい。一度、大きくして動いてみたのだが思ったのは邪魔の一言。だからと言ってまな板というわけではなく普通といったスレンダーな体つきに落ち着いた。髪色は白銀から毛先に向かってグラデーションになっている。派手さはなく、徐々にパステルカラーの水色から薄い赤へと変わっていく。目は深紅な赤だ。


この見た目なら口数が少ないキャラか天然系ののんびりしたキャラが似合うと思う。俺の好みがそっち系なのだ。あまり深く追求しないでいただくとありがたい。


名前は・・・なんでもいいか ランダム~ クリスタルになったな


これで作成は終了だ。ステータス配分やらはどうでもいいだろう。どうせ数日のキャラだ後で配分できるようだし初期設定でいじらず始めることにする。注意事項やら何やらも流し読みしすべての項目を終了する。


【ようこそ ドリームワールドへ】


その音声と共に俺は始まりの街に降り立った。



==========================================



光が収まるとどうやら広場に立っているらしい。今は朝方か。真ん中の銅像を囲むように等間隔にベンチが置かれておりかなり広い作りになっている。銅像は女神像かな?豪奢な服を着飾った人物だ。台座には文字が書いてあり、読んでみるとここがリスポーン地点となるようだ。他の街に訪れたときには触れることでファストトラベルが解放されるみたいだ。ん?どうやらヘルプの項目が増えたようだ。少し確認してみる。


ヘルプにはほとんど何も書いていなかった。キャラクリで触れた項目と女神像についてあとは利用規約に乗っていた説明はあるがそれ以外は余白が続いている。自身が体験したことがヘルプに載るようだ。様々なところに訪れて確認しろと言う運営の移行かな?


確認した感じ今の俺にとって大事な部分は時間だ。現実とゲーム内の時間の違いについてだ。現実で4時間進むとゲーム内では一日経過するらしい。このゲームは現実の六倍の速度で時間が経つことになる。となると18日から一か月この世界で過ごすことになるのか。意外に長いな。


とりあえず気ままに散歩してみることにする。


街並みはファンタジー設定で出てくる中世ヨーロッパ風という所だろう。三階建て以上の建物が少ない。全体的に色合いも同じ感じで街の背が低く感じる。別世界に迷い込んだと思わせるような造りなのかもしれない。


一通り歩き回り夜景も楽しんで朝方になりさてどうしようかと思った頃。突然、リスポーンした。周りをキョロキョロ見渡し後ろに女神像があることを確認する。意味が解らずステータスやらヘルプやらを確認したところ。どうやら餓死したらしい。空腹状態が長く続くとスリップダメージが発生するようだ。状態に気づかなかった理由は痛覚設定の問題の様だ。0~100まで設定でき推奨は50。初期設定は0らしく、0の場合様々なことに鈍感になってしまい気づかなくなる。運営め~と思いながらも推奨どうりの50に変える。


他にも何か落とし穴はないかと設定を確認していく。痛覚設定以外は致命的なものはない様子。色調反転て使う人いるのかな?BGMは面白そうだったのでオンにした。意識しないと忘れそうな絶妙な感じにBGMが流れようになった。結構細かい項目があったが気になったらでいいだろう。


このゲームは体験させることが前提なのかもしれない。一度体験しないとヘルプに詳しい項目が現れないしチュートリアルもない。トライ&エラーが前提のゲームってなかなかないと思う。空腹度に関しては初心者の洗礼みたいなものなのかな?NPCに聞いたら一通り分かるのかもしれない。



==========================================



あれからたぶん18日以上たったのだろう。今の状況が理解できず混乱しているところだ。


今いる場所は真っ暗な空間。ここがどこなのかわからない。直近の記憶はそれまでのゲーム内での数日間、同じように眠りについたところまでは覚えている。


現状になるまで何をしていたか簡単に振り返ってみようと思う。


餓死でリスポーンしてからもスリップダメージを気にせずに街中を歩き回った。ふらふら歩き回る中でなんとなく違和感を感じ設定を見直す。あーでもないこーでもないといろいろ試した結果、痛覚設定は100に、ゲーム的な要素は一部残しつつぱっと見ではNPCとプレイヤーが見分けがつかないように設定した。


ついさっきまで感じていた違和感はなくなりより景色が鮮明になったように感じたのだ。


それからは気を良くし空腹感が少し気になるがリスポーンを繰り返して街中を練り歩いた。たぶん10日間ぐらい繰り返してマップの情報がすべて埋まったことに満足し次の行動に移った。


と言っても特に目的もなく行動していたので昼寝しやすそうな場所を探して彷徨っていたように思う。途中からリスポーンしなくなって不思議に思うことはあったが気にすることなく時間は進んでいった。


敵対的でないモンスターだけがいる初心者平原を歩き、日当たりの良さそうな場所を見つけてはその場で眠る。自然に目が覚めたらまた場所を探して眠る。そんな行動を繰り返していた。


最後の方は一緒に眠るモンスター達が周りにいて驚いたがそこまで気にせずに行動を繰り返した。


MMORPGゲームの遊び方としては可笑しな行動をしていたが特に咎められることもない。虫のいない草原で寝るという体験は面白く想像よりも快適で心地よかった。


で、起きたらこの真っ暗な空間にいたと・・・


どういうことだろう? ここが天国?地獄? それともバグでどこかに飛ばされたのだろうか?


メニューが出ないか試してみたが何も起こらない。本当にどうすればいいのだろうか?



==========================================



この空間に来てから結構な日数が経っているはずだ。常に真っ暗な空間な為時間の間隔が分からない。あれから、その辺をうろうろ、飽きたら座り込み、めんどくさくなったら寝る。そんなことの繰り返し。特に何か起こることもなく、どこを探しても何も見つからない。


一つ分かったことは現実じゃないだろうということだ。お腹は空かないし、疲れることもない。眠くなることはないけど寝ようと思えば寝れる。こんな体なのだから現実ではないだろう。


今日も何もないだろうな~と考えながらうろうろしていると何かが切れる音?感覚?だろうかそんな気がした。


唯一変化があったその感覚を思い出すように手繰り寄せるように探してみたが何も感じない。がっかりしながらなんとなしに呟いた。


「ネットでもあれば暇つぶしできるのにな~」


突然目の前に半透明のウィンドウが出現する。それはとても見覚えのあるもので壁紙にズボンに入った子猫の写真が使われている。俺が使っていたパソコンのデスクトップ画面だ。


久々の変化に酷く驚きつつもそこからは早かった。似た状況の人がいないか検索しては調べる。画面は増やせたので作業用BGMを流しながら調べ続ける。


他に何かできないか声に出して試したところこの空間自体をレイアウト変更できることに気づく。少し広いワンルームに変えベットも作ることで人心地ついた。


ベットに倒れながら適当に他に何か出来ることはないか試していたところドリームワールド・オンラインのメニューが開いた。最初に試した時は何も変化がなかったのにどうしてだろう?


メニューを見ていると本来そこには【ログアウト】がある場所に【ログイン】の文字がある。なんでもいいので変化が欲しいため迷わず押してみる。


視界が光に覆われしばらくすると俺は初心者の草原に立っていた。


キョロキョロと周りを見渡し理解し落ち着くまで時間がかかったがもう一度メニューを開き【ログアウト】と書かれている文字を押す。


同じような視界不良の後に今度はさっき作り出したワンルームのベットに横になっていた。


「これはどういうことだろう?」


今がゲームからログアウトしている状態ということはここが現実?でも、人として必要な欲求が起こらないしもしかして幽霊とか?それだとこの空間の説明ができない。デスクトップの画面は開くしVRゲームをやっている時のような不思議な感覚。ゲーム内?パソコンの中?それだと・・・・


「電子生命体とか?」


そういえば、ここでもゲーム内のメニューが開けるならヘルプも確認できるのだろうか?


ヘルプを確認すると・・・


電脳世界・・・どこまでも続く人が作り出したもう一つの世界。人が自ら作り出したのにも関わらず人が認識することはできない。この世界を構成するのは情報。


電子生命体・・・魂が肉体から切り離され電脳世界に漂う存在。精神生命体に近く、死から遠い存在となる。その情報は情報の海に流されながらも個を保ち独自の存在として確立している。


説明の冒頭の部分だけ抜粋したがこのように書かれていた。


これは今の俺のことを説明しているのだろうか?ここは電脳世界で俺は電子生命体。VRを使って自殺なんてしたから今の状況?肉体から切り離されたことから現実の俺はあのまま死んだのだろう。


アバターの俺はこの世界に取り残されたということだろうか?


当初の目的は達成できたようだがややこしい状況になってしまった。死ぬには死ねたが電脳世界を漂う存在になってしまった。


今の状況にとても驚いているが何もなく何もできないウロウロしていた状況よりはましだろう。具体的に今の自分に何ができるのかすべて調べ終えてから何かをするべきだと思う。



==========================================



この世界に来て変化があってからだいぶ月日が経過している。その中でわかったことは俺にとってこの状況はそれほど悪くないということだ。


今まで煩わしいと思っていためんどくさい事柄。現実世界で生きていく上で必要なことをしなくていい存在になった。それでいて周りの目を気にせずに自身の趣くままに行動することができる。それは俺が思っていたよりも開放的なことでネガティブキャンペーン実施中な俺の考え方は徐々に上向きになっていることを実感している。


この電脳世界で出来ることは簡単に言えばネット関係のことは全て出来るようだ。知りたいことは調べられるし動画の視聴、コメントの書き込み、各種編集、果てはハッキングまですることができる。


この体は存外便利で俺はプログラム関係の技能は持っていなかったがそれらの編集が感覚で出来てしまう。俺が侵入できない情報はないし俺がウイルスに侵されることもない。どれだけ古い情報でもサルベージすることができる。何不自由なく退屈しない状況にいる。


本来であれば人恋しいとか寂しいとか思うのかもしれないが俺にはないようだ。ここ数ヶ月一人でいるがそういった感情はない。娯楽も充実していることから退屈することもない。外出するような感覚でドリームワールドに行けることも大きいだろう。他のMMOゲームも遊ぶことができたためより退屈しない。


それに割り切りのような考え方もあるのかもしれない。何が関係して俺だけがこんな状況になったのか分からないがどちらにせよ現実の俺の肉体はないことは理解している。俺自身の戸籍情報をあさったところ死亡扱いになっていることが分かっている。葬式もどうやら家族が上げていたようでその履歴も残っていた。思ったよりも迷惑をかけたようだが俺からは何もできない。


感謝の気持ちとして勝手に名前を借りて口座を作りお金を増やしておいた。それとなく口座のことは知らせたので使うかどうかは任せることにする。勝手にお金が増えていく口座は怖いかな?


そんな感じでちょいちょい電子マネーを増やしたりなんかの操作をするなど好き勝手している。俺がこれだけ好き勝手しているのに気づく様子はない。それでいて他の人のハッキングは気づいて対処しているようだから防衛機能自体は機能しているようだ。俺の存在自体が特異なのかもしれない。お詫びとしては何だがハッキングを常習的にしている人がいれば知らせている。それでどうなるというわけではないが偽善のようなものだろう。俺自身がハッキングの常習犯であるわけだし・・・


総じて、何不自由なく退屈もなく過ごしているのが現状だ。


ドリームワールドの方はソロプレイだが遊んでいる。少し放浪癖があるのかクエストも受けず目的もなく行動することが多い。それとスキルと称号を獲得していた。


スキル

空腹無効・・・空腹によるスリップダメージが発生しなくなる。

習得条件:連続6日間、一度も食事をとらない事。(回復アイテムによる回復も食事に該当する)


称号

動物の友達・・・ノンアクティブモンスターをテイムしやすくなる。ノンアクティブモンスターが増える

取得条件:連続一日、一度も戦闘エリアで攻撃をしない。


はじめの18日間でリスポーンしなくなった原因は空腹無効であることが分かった。草原で寝ている時に周りが囲まれていたのは称号を取得していたからだろう。少し気にしていた不思議はステータスを確認したことですぐに分かった。


もう一度ログインしてからは少しはまともなプレイになっていると思う。ステータス配分は考えるのがめんどくさかったので平均にしているがスキルは攻略情報を調べながら少しずつ取得している。生産活動をしたり戦闘をしたりとふらふらと行動しているがそれなりに楽しんでいる。


この体だからずっとプレイできるため俺のアバターは順調に強くなっている。とりあえずの目標はドリームワールドを遊び尽くすことだ。



俺という存在がどうなるのか分からないが何か大きな変化がまた起こるまでは問題ないだろう。


たぶん・・・






ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ