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『彼女』と『彼女の彼女』

僕の彼女は可愛い。

顔が、というよりは仕草や行動が、といったところか。いや、顔も可愛いのだが。


今日は制服ではなく、私服のスカート姿で髪の毛もよく見るツインテールではなく、複雑に編み込んである。

やや大人っぽく仕上げているその姿は、僕と一緒に居るために背伸びをしているような感じで、なんだか嬉しい。


まぁ、幼い顔つきに似合わない見事な双丘はまさかのパイスラによって、大人顔負けではあるのだが。


二人で手を繋ぎながら、水族館デートをしていると、はしゃいでいるふたりの女の子が目の前を通り過ぎる。

彼女は横目で追いながら、なにやら呟いていた。


大きな円柱に魚の群れが渦をなして泳いでいる。


「ナオキはどう思う?」


彼女が聞く。

彼女の目の前には群れているのに反対を向いた魚がいた。


「なんか、反抗期みたいやん。

ミサにそっくり。」


魚を指差して言うと、彼女からすかさず蹴りが飛んできた。


「違うわっ。

しかも、魚の話ちゃうしー。」


痛くない足をさすっていると、彼女がしゃがみこんで話してくる。

少し心配してくれたようで顔色を伺っている。

僕は、目の前に広がる絶景を眺めながら彼女の話を聞く。


「さっきの女の子達の話やって。」


見当違いの話をして蹴られたようだ。

絶景が見られたのだから、後悔はない。そもそも痛くも無いので、寧ろ得をした気分だ。


「どっちがタチかなーって。」


すっと立ち上がって、彼女に手を差し伸べる。

すべすべした手の感触と、無意識のうちに当たる柔らかな胸…


「え?…たち?」


一瞬、頭の中の変換機能が作動しなかった。

そうだった、彼女は少々腐女子だ。

僕の煩悩を誤魔化しながら、彼女の話にあわせる。


「あー、ちゃんと見てへんかったなー…」


見ていてもそんな事は考えないが。

二人で手を繋ぎ直し、また歩き出した。


「背の高い子がネコな気がする」


彼女の妄想が始まってしまった。

始まったなら、終わるまでは付き合うしかない。

途中で止めると後日、忘れた頃にほじくり返されるから、しかたない。

というか、彼女は彼女の煩悩にまみれてるな…


彼女がなんでだかキラキラした目で妄想話を熱く語る。

はいはい。とか、そうかー?とか適当な相槌を打ちながら、水族館を後にする。


彼女の中でさっきの子達は立派な百合カップルとなってしまった。


高所恐怖症の僕を無視して観覧車へと向かう彼女を追いかけて、一緒にゴンドラに乗る。

シースルーじゃなくてよかったが、一周15分。

しばらく我慢だ。


「ナオキはわんこ受けだよねー。」


彼女に不名誉なイメージを植え付けられた。


「男とか無理やしっ!」


無駄に貞操の危機を感じて身体が強張る。


「んー…あたし、バイだからそれわかんないや。」


…急、そしてまさかのカミングアウトに僕の思考は一時停止してしまった。


「だって、勿体無いやん。

好きやなぁって思う人が同性やから、恋愛出来ないってなったら…なんか寂しくない?」


そういうものなのか…

同性愛に嫌悪感はないし、そういう人がいるのもわかる。

でも、いざ自分が…となると、どうも実感が無い。


「ミサは…女の子と付き合ったり…い、いちゃいちゃ

、したり…したん?」


彼女と見知らぬ女の子とのいちゃいちゃ…

何故だろう、高鳴る鼓動を無理矢理鎮める。


「ひとりね。

イケメンで身長高い、巨乳の子ね。」


…けしからん。巨乳がふたりで乳繰り合うとか!

いや、でもイケメンか、ここは嫉妬するところなのか!?いやいや、でも、相手女の子ですよ。ええ、でも、だからって彼女はその巨乳ちゃんが好きなんやろっ?…え?あーーー!どうする?!それ!

正直言えば、混ざりた


ー ちゅっ


「あ…え…?」


彼女にキスをされた。

彼女との初めてのキス。


「ナオキ、気付いてた?

今、一番上やねんで。」


何かもぞもぞしている彼女を見て、僕は色々考えていたはずなのに、どうでもよくなってしまった。

笑顔で、少し照れている彼女は今までで一番可愛く見える。


「なんとか言ってよ、めっちゃ恥ずかしいやん。」


可愛い。もう、彼女が今、側に居るだけで幸せだ。


「一番上って…キス…するもんなん?」


ドラマやアニメの世界では見た事ある気はする。

実際に僕は観覧車には乗らないからなぁ…


「観覧車のてっぺんでキスすると…ってジンクス?みたいなやつ、知らんの?」


「俺、そういうん、あんま知らんねん。」


でも後で調べてみよう。彼女がちょっと拗ねている理由がわかるかもしれない。


観覧車もいよいよ一周を終えようとした時、彼女がまた顔を近づけてきた。

今度は僕もその唇に吸い寄せられるように、近づき、目を閉じた。


「あとね、気にしてるみたいだから教えてあげる。

あたしは、処女で誘い受けタイプ。

ナオキと一緒のおっぱい好きやでっ。」


耳元での囁きに、目を見開いた。

処女!誘い受け!いや、それよりもおっぱい好きだと?!

これは…確実にバレている!

待ち合わせた時のパイスラのチラ見も。

電車移動中、こけない様にと支えた時のパフパフも。

しゃがみこんだ彼女の絶景鑑賞も。

むっつりスケベという、レッテルを張られてしまうっ!


いたずらっ子のようにニヤニヤと笑う彼女は、颯爽とゴンドラを降りていく。


「だから、頑張ってくれたまえ!

素人童貞くんっ。」


「あ、うん…」


僕は彼女に出会う前、彼女に何をどこまで話しただろう…

時既に遅し。レッテルはもう沢山張られている。


彼女が彼女でなかった時、僕らの会話は…間違いなく混沌(カオス)だった。


付き合い始めて、ひと月くらい。

ぼくは彼女を知れば知るほど、わからない事だらけだ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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