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異世界キャンプ旅  作者: 天浮橋
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◆再開


◆再開



土曜日の朝。  今日は待ちに待った初キャンプの日だ。


しかし・・ 昨晩から土砂降りの雨である。


なんてこった! せっかく寝る前にテルテル坊主を3つも作ってベランダの物干しざおに吊るしたっていうのに。


前の通りを歩いていた親子連れに笑われて恥ずかしかったのに、あの頑張った俺は何だったのか。



でも、たかが雨が降ったくらいで、キャンプを中止するような俺さまでは無いのだ。


昨日は、近くのスーパーでパスタ麺とミートソースの缶詰、サラダ用の野菜、飲み物、朝食用のパンなどを買って来たし、その他の準備にも十分な時間をかけた。


これで中止したら男がすたるってもんだろう。



さっそく、荷物をクルマに積み込んで出発だ。


おっとしまった。 クーラーBOX用の保冷剤を忘れてた。  これも昨日、冷凍庫に入れて冷やしてあったのだ。


保冷剤一つだけだとちょっと不安だったので、ペットボトルに水を入れて凍らせたものも1本一緒に入れた。


これで夕飯の時に、キンキンに冷えたビールを飲めるだろう。



今日のキャンプ予定地は、富士五湖の一つである西湖の湖岸にあるオートキャンプ場である。


雨が降っている中、テントを設営するとかは初心者キャンパーには苦行なのだ。


この根性なしとか言われそうだけど、テントの設営も初めての俺には嫌な予感しかしない。


最悪、この土砂降りの雨が上がらなければ、車中泊もありだと思う。


こんな時にオートキャンプ場は、楽ができるのが良い。



クルマは中央高速を順調に走る。  軽ワゴンだがターボが付いているので、高速も苦にならない。


(さすがに談合坂は、エンジンがうなるが)



雨で空いている高速を順調に走り、本当だったら富士山がきれいに見えるだろうインターを降りて、一般道を西湖目指してひた走る。


が、しばらく走っていると徐々に視界が悪くなってくる。



あ゛ーー  なんだよ雨の日に霧が出るなんて最悪じゃん。  フォグのスイッチを入れるが、あまり変わらない。


まあ、対向車とかに早めに認識してもらえるだろうから、点けないよりはいいのだろうけど。


しかし、ついに濃霧と言っても過言でない状況に陥る。 ぜんぜん前が見えない。 もう最徐行でノロノロ走る。


まるで飛行機が雲の中を飛んでいるみたいだ。



やっぱり中止すればよかったかな・・・  そう弱気になりかけた時、急に視界が晴れた。


しかも、あれほど降っていた雨も小雨になっている。


へへんっ やったぜ!   日頃の行いがイイ俺様に、天が味方してくれたに違いない。



この後はカーナビお姉さんの声の誘導で、目的のキャンプ場には迷わずに着くことができた。


さっそく受付に行き、利用料の支払いと注意事項などを聞く。



ここの受付のおじさんが着ぐるみを着ているのは、お子様連れのキャンパー向けサービスなのだろうか。


それにしてもハリウッド映画の特殊メイク並みで、ずいぶんと気合を入れている。


おじさんが馬、隣の若い女性が牛の着ぐるみで少し笑ってしまった。



受付を済ませ、指定されたエリアにクルマを走らせる。


出来れば湖に近い方が雰囲気があっていいだろう。  湖は川と違って急な増水などを気にしなくてよいところもグッドポイントである。



キャンプ場は、さすがにこの天気なので、俺の他には数台のクルマが停まっているだけだ。


なので、自分が好きな場所にクルマを移動させる。


地面は、水はけは良さそうなのだけど、さすがにあの雨の後なので今日はテントの設営は諦めた方がよさそうだ。


俺が乗ってきたワゴン車は、車中泊ができるように改造されている。  なのでテントがなくても大丈夫なのだ。



時刻はまだ2時を過ぎたところなので、辺りを少し散歩することにした。


水辺に沿って歩いていると、オレンジ色の小さなテントの前で、ダッジオーブンを火にかけている女性がいた。


最近では、女性のひとりキャンプも珍しくないそうだ。 (実は先日買ったキャンプ入門書に書いてあった)


へぇー 結構気合を入れて食事を作ってるんだな。


その女性の後ろ姿を見ているうちに、なんだか俺も本格的な料理を作ってみたくなってきた。



ちょっとの間、立ち止まって見ていたのだけど、急に風向きが変わって焚火の煙が俺の顔の方に向かってきた。


うわっ っとっと  慌てて煙から逃げる。



あらっ?  またお会いしましたね。


えっ?  その声は、もしかしたら・・


俺は煙のせいで滲んだ涙を手で拭いながら、女性の方をゆっくりと向いた。



第7話「二人キャンプ」に続く

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