◆ここは異世界なんですか?
◆ここは異世界なんですか?
あの~ もしかしてお困りの事とかありますか?
突然、後ろから声をかけられ、驚いて振り向くとそこには綺麗なお姉さんが笑顔で立っていた。
いや~ 恥ずかしながら、お肉は買ってきたのですが焼肉のタレや着火剤とかライターとかいろいろ忘れてきてしまって、今日はここでのバーベキューは諦めて帰ろうとしてたところです。
あらあら、それはたいへんでしたね。
せっかくここまで来られたのですし、もしよろしければ、あたしたちと合流しませんか。
お姉さんが指をさした方を見れば、若い男女がタープを張ってバーベキューをしている。
せっかくお誘いいただいたのですが、ひとり部外者と言うのもちょっとハードルが高いので、すみませんがご遠慮させていただきます。
そうですか。 そうですよね。 あたしったらごめんなさい。
いえ・・・ こちらこそ、なんかすみません。
では、着火剤とライターをお貸しするので、こちらで予定どおりバーベキューをされて行かれるのはどうですか? 焼肉のタレも余分に持って来てるので。
えっ あっ、はい。 そうしていただけるのでしたら嬉しいです。
お姉さんの突然の申し出にちょっと驚いたが、目の前のお肉が俺の腹ペコ状態を再び呼び起こす。
よかった。 それじゃ直ぐに取ってきますね。
そう言うとお姉さんは、走って着火剤などを取りに行ってくれた。
お姉さんのバーベキュー仲間が手を振って、お姉さんを呼んでいる。
なんだか自分のために手間を取らせてしまって、申し訳ない気持ちになる。
お姉さんは途中、石に躓いて転びそうになっていたけど、運動神経は良さそうで無事に戻って来た。
はい♪ これ。 着火剤は多めに使った方が失敗がなくていいですよ。
どうもありがとうございます。
いいえ。 あと何か困ったことがあったら遠慮なく声をかけてくださいね。 もうしばらくは、ここにいますから。
あの、着火剤はおいくらでしたか?
ああ、お金は結構ですよ。 ライターも使い捨てですし、もう少しで空っぽになりそうだから差し上げます。 タレも半分しか入ってませんし、どうぞ使ってください。
すみません。 いろいろとありがとうございます。
俺が深々と90度でお辞儀をしたのが可笑しかったのか、お姉さんはコロコロと笑った。
まるで絶望の淵で女神さまに救われたかのようだ。
あの、お友達の方たちにも、ご迷惑をおかけしすみませんでしたとお伝えください。
あら、そんな。 なにも気になさらないでください。
ところで皆さん、暑いのに着ぐるみとかでバーベキューって大丈夫なんですか?
えっ? 着ぐるみ?
ええ。 まあ、猫耳とか可愛いですけどね。
ふふっ
お姉さんが戻って行ってから、俺は着火剤に火をつけ、勢いよく燃え始めたところでその上に炭を並べた。
火が熾きるまでの間、ワゴン車の荷室にどんなものがあるか見てみる。
いろいろな物が収納袋に入れられて整理されているので、じっくり確認していく。
テント、タープ、寝袋、エアマット、焚火台、クッカー、バーナー・・・
みんなコンパクトで使いやすそうな物ばかりだ。
そういえば親父の部屋に、カセットボンベや固形燃料、小さな消火器とかがあったな。
そうか。 クルマだから危険物を使うとき用に積んでたのか・・・
いろいろ見ているうちに炭が真っ赤になって来たので、いよいよ待望のバーベキュー開始だ。
ベリベリッ
俺はバーベキューセットのラップを勢いよく剥がした。
あっ ・・
第5話「もう一度会いたいな」に続く