◆蒼汰、北海道で本物の熊を見る(その8)
◆蒼汰、北海道で本物の熊を見る その8
俺はサキさんのお母さんに連絡しようとして、ズボンのポケットに手を入れハッとした。
そうだ、俺のスマホ・・・
俺のスマホはサキさんが、「あそんで池」にぶん投げて沈めてしまったのだ。
どうしよう・・ これじゃ連絡が取れない。
一瞬パニクったが、キャンピングカーでサキさんがタブレット端末を使っていたのを思い出した。
俺はダッシュでクルマに走り、ベッドの上にあったタブレットを立ち上げた。
OK、IP電話のアプリも入ってる。 確かヘッドセットもこの物入れ中にあったはず。 よし、あったぞ。
すぐに上田、須藤建設でググって電話番号を調べ、サキさんの会社に電話をかける。
プルルルッ プルルルッ
はい。 いつもありがとうございます。 須藤建設です。
事務員の女性が電話に出た。
わたくし、空野と言います。 サキさんのお母さまに連絡を取りたいのですが、自宅の方の電話番号がわからなくってこちらに電話させていただいたのですが。
あーーー 分かりました。 いまお繋ぎしますので、少々お待ちください。
すぐに保留音「峠の我が家」が流れだす。 どうやら、俺は須藤建設社員の中で知らない人はいないらしい。 ←サキさんをそそのかしたという悪い意味で
もしもし 蒼汰さん?
あっ、はい。 空野です。 突然電話してすみません。
いいえ。 サキは元気にしてますか?
どうやらお母さんは、サキさんが俺と一緒にいることを知っているらしい。
それが、2時間ほど前まで一緒に居たのですが、キャンプ場で突然姿が見えなくなってしまって。
まぁ・・ でもあの娘のことだから、その辺をふらふらしてるのではなくて?
いいえ、キャンプ場の隅から隅まで探したんですが見つけられないんです。
そうなの?
ところで、お父さまは家にいらっしゃいますか?
主人なら、いま会社の方で取引先の方と商談中ですよ。
そうですか・・・ 残念だが、サキさんが親父さんに連れて行かれたのではないことがこれで判明した。
もしかして蒼汰さん、主人がサキを連れ戻しに行ったと思ったの?
はい、すみません。 でもそうじゃないなら、いったいどこに・・・。 俺なんだか嫌な予感がするんです! いったいどうしたらいいのか・・・
わかりました。 いま、主人を呼んできますから、このままで待っていてください。
電話がまた保留音に切り替わる。 今度は「犬のおまわりさん」が流れて来る。 これってわざとじゃないよな。
2分も経たずに親父さんが電話に出るが、迷子の子猫ちゃんの歌詞が俺の頭の中でグルグル回っている。
おい! サキが行方不明って、どういう事だ!
申し訳ありません。 キャンプ場で・・ サキさんが洗濯している間に居なくなってしまって。 もう2時間以上探しているんですが、どこにも見当たらなくて。
心当たりは無いのか?
特には・・
喧嘩したとか、お前のことが嫌いになったとか。
いえ、それはありません!
もしもサキに何かあったら、きさま ただじゃ置かんからな!
分かってます。
で、お前今どこにいるんだ?
釧路です。
なんだと! 今度は釧路にいるのか・・・ で、サキはいつ天然水を飲んだんだ?
今朝、朝食の後に飲みました。
それはまずいな。 早く探さないと夜までに尻尾が生えてしまうかもしれん。
でも、どうやって探したら・・・
そうだ、蒼汰。 お前犬になれ! なれば嗅覚が鋭くなる。 犬になってサキのにおいを追うんだ!
なるほど、その手がありましたワン。 あっ! 耳が生えて来ましたワン。
そうか、もう1時間くらいすれば、鼻も犬の鼻になるだろう。 そうしたら、急いでサキを探すんだ。 いいな!
はいだワン!
俺はクルマを下りて、センターハウスのランドリーコーナーへと急いだ。
第35話「蒼汰、北海道で本物の熊を見る その9」に続く。




