表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界キャンプ旅  作者: 天浮橋
18/52

◆異世界住人の秘密(その1)


◆異世界住人の秘密(その1)


次の日の朝早く、俺とサキさんは急いでテントを撤収し、朝食も取らずに帰路についた。


蒼汰さん、こんなことになって、ごめんなさいにゃ。  サキさんが助手席でしょんぼりする。


いえ。 サキさんのせいではないですよワン。   くそっ、このワンってなんとかならないのかワン!


プッ


サキさんが俺の犬言葉に思わず吹き出す。  まあ、しょんぼりされるよりは、いいけど。



キャンプ場を出るとき、いつものように濃い霧の中を通った。


俺の犬耳は霧の発生と同時にスゥーっと人間の耳に変わったが、サキさんの猫耳は元には戻らなかった。


あ、あれっ?   蒼汰さん、あたし戻らない・・・  ど、どうしよう。


大丈夫ですよ。 きっと元に戻るのに少し時間がかかってるだけですって。



それより、少し飛ばしますよ。  俺は正直言うとこの時、サキさん以上に焦っていたと思う。


やっぱり、昨日のうちに強引にでもサキさんを連れて帰ればよかったんだ。  


出発するとき、お母さんにサキさんを預かりますって言って来たのに・・・  もし戻らなかったらなんて言ってお詫びしたらいいんだ!



高速を上田菅平インターで降りるころになっても、サキさんの猫耳は元に戻らなかった。


あと30分もしないうちに、サキさんの家に着く。


俺はもう親父さんに殺されてもしかたがないと覚悟を決めた。



しばらく走るとクルマは千曲川を渡った。  俺の気持ちとは裏腹に、真っ青に晴れ渡った空に浮かんだ白い雲が、川面に映っている。


こんなことにならなければ、昨日の夜にサキさんに告白しようと思っていたのに。



蒼汰さん。 そこを曲がると近道ですにゃ。  サキさんが指をさした交差点を右折し、クルマは細い道に入った。


直ぐにその道の奥の方に5階建てのビルが見えて来る。



そして、サキさんの家の敷地に入るなり、親父さんがクルマ目掛けて突進してきた。  きっと娘の帰りを寝ないで待っていたのだろう。


クルマを止めて降りた途端、強烈なパンチを一発喰らう。  漫画ではないけどパンチを喰らった俺は、背面飛びのような見事な放物線を描きながら吹っ飛んだ。


地面に叩き付けられたと思ったとたん、親父さんに胸倉をつかまれる。


ぐっ  口の中に鉄の臭いが広がる。



お父さん やめて!  蒼汰さんに酷いことをしないでにゃー!


にゃー?  だと・・   サ・・サキ  お前・・



こりゃあ、たいへんだ。  サキ、こっちに来るんだ。  サキさんの猫耳を見た親父さんは、たいそう慌てる。


待って、蒼汰さん怪我してるにゃ。


そんな奴はほっといていいから、こっちに来なさい!  親父さんは強引にサキさんを家の中に連れて行く。



蒼汰さん、ごめんなさいね。  うちの人は今でも現場監督をしてるから、力は熊なみなのよ。


サキさんのお母さんが、俺が絶対に殴られて怪我をするだろうと思っていたのだろう。  救急箱を手に持って立っていた。


マジっすか? 


ええ、あの人、いままでに3回熊になっちゃたことがあるの。


うへぇ  でも、お父さんのイメージはやはり熊ですよね。  俺は親父熊に妙に納得してしまった。

   

 

***


俺は、サキさんのお母さんに、俺からお父さんにきちんと謝罪させてくださいとお願いした。


するとお母さんは、俺の傷の手当をしてくれながら、分かってますよとにっこり笑った。


その笑った顔はサキさんに、とてもよく似ていた。



第19話「異世界住人の秘密(その2)」に続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ