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第4話「チートvsチートⅡ」

 さて、時を止めたは良いものの、どうするか。

 ちなみに、さっき数えたが、時を止められる時間は7秒だった。

 ただ秀人は一つ、引っ掛かるところがあった。


 館長は何故、顔にあんな包帯を巻いているのだろうか。


 秀人は考える。

 何故なんだ?

 顔を見られたくないのか?

 自分の傷を剥がすことが出来るのに、何故包帯?

 引っ掛かる。

 妙に引っ掛かる。


「俺の推理が正しければ……!!」


 秀人は崩れた一つのレンガの破片を、繰り返し蹴った。


 読者様は覚えていると思うが、時間停止中にモノは動かず、動かそうとすればエネルギーだけが溜まって行く。


 腹、右肩の傷が悲鳴をあげるが、構うものではない。


 秀人は何のつもりなのか、7秒の間、一つのレンガの破片を蹴り続けた。


「『時間制限(タイムリミット)』」


 動き出す。


 館長は時間停止前に、「時を止めようとも!!!」と叫んでいた。


 叫んでいたので、口が大きく開いているのが、包帯越しに見える。


 ……そこに、エネルギーの放出されたレンガの欠片が、包帯を破り直撃。


「ナニっっ!!?」


 破片が喉に『傷』を付けた。


「お前には弱点がある。

 それは『体内』だ。

 『体の表面』に付けられた『傷』しか飛ばせない。

 よって口内のその『傷』は治らない。

 顔の包帯は、それを悟らせまいとする策……!!」


 館長の口から、豪快に血が溢れ出す。

 破れた包帯がほどけ、顔が露に。


「うっ……、うっ……」


「へぇ~、館長結構イケメンじゃん」


 館長が口元を隠し、怒りを抑える。


 ……馬鹿にされている。

 私は今……! 追い詰められて、馬鹿にされている!!

 しかし弱点がバレたから何だ。

 私は館長だ。

 私は強い。

 こうやって口元を押さえれば、もうコイツは私に手出しできない。

 最終的に勝つのは、私だ。

 このガキの内臓をブチまけてやる……!!


 館長がまた、短剣で自分の腹を斬ろうとする。


「ところで館長、口内のレンガ、痛くないの?」


「……!!」


 自分の口に、レンガの破片が残ったままだということに、やっと気づいた。


「結構トゲトゲのやつ入れたから、口から出さないとキツイと思うぜ?」


 た、確かに痛い。

 めっちゃ痛い。

 これはきつい。

 破片を動かそうとすれば、新たな口内傷が生まれ、動かさなければその傷が深くなる。

 まずい。

 舌が限界。

 痛みで、自分の腹をうまく斬れない。


「お前が口を開いた瞬間、俺は時を止め、この短剣を使いお前をブチ殺す」


 斬ってやる……!!

 斬ってやるぅぅぅ!!!

 速く!! 速く斬らねば!!!


 焦れば焦るほど、手元が狂う。


 口内の傷も増える。


 一方で秀人は平静だった。


 もう少しで、この無敗の館長を殺せるかもしれない。

 もう少しで、自分は殺されるかもしれない。

 秀人はそんな状況は初体験だが、意外と平静としていられるものだった。


 さあ、館長の手元が離れる。


 離れた……。


 次に口が開くぞ。


 開くぞ。


 速く開け。


 開く……。


 開くぞ……。


 開け。


 開けええええ!!


 開いた……!!


 開いたのは、ほんの『一瞬』だった。


 ほんの『一瞬』だ。


 秀人はその『一瞬』を逃さなかった。


「『時間停止(タイムブレーキ)』ィィィィィィィィ!!!!」


 止まる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 止まった館長に全速力で向かう!


 館長の露になった喉を、突いて突いて突きまくる!!!


 自分の出血量は気にしない。


 気にならない。


「ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 ただただその7秒間が、秀人には何時間にも感じられた。


「『時間制限(タイムリミット)』ォォォォォォォォォォォォ!!!!!」


 時間再始動直後、剣は館長の喉を貫通。


 とんでもない興奮状態で、館長を崩れたレンガにブン投げる!!


「カァ………………ァ…………ン……………………」


 声にならない断末魔をあげ、ドシャアアアアアアンンン!!


 派手な音と共に、死亡……。


「はぁ……はぁ……」


 秀人だけが残された。

 ジャージに染み渡る鮮血は、更に領地を広げていた。


 館長の脱いだ包帯を借りることにする。

 返り血でかなり汚れているが。


「いや、殺っちまったなぁ……」


 ジャージを脱ぎ、包帯を巻き始める。

 無敗とか言っていた館長を倒した。

 それに対する優越感は、皆無なわけではなかった。


 ふと視界の端に、契約の箱が入った。


「一応やっておくか」


 包帯を巻き終え、箱を持ち右手をかざす。


「熱っ!! 熱い熱い!!!」


 数秒間、手の甲に物凄く熱い感触があった。

 よく見れば、その手の甲に『No.7814』という文字が焼かれていた。

 つまり秀人は、7814人目の組織構成員となる。


「はぁ……、これからいろいろ疲れそうだな……」


 血まみれのジャージは捨て、机の中に用意されていたスーツを着る。


「よし、これで俺が怪我してるって分かんねーな!!」


 館長室を出て、23班ミーティングルームへと帰っていった。

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