邂逅、あるいは必然とも言える出会い
一読して戴き、幸いです。拙いですが、ご了承下さい。
「ガアアァァァァァァァァァァ!!!」
阿鼻叫喚が、体を撫でる。血飛沫が空を舞い、硝子のように光を乱反射して、夥しく地に降り注いだ。
それを行う僕の一挙手一同手は、全て僕の体がやったことであり、全て僕の意思なんかでは無かった。
ふと、 あの人の言葉が甦る。
_________『異能は私事であり、 他人事なんだ』
彼が何気無く発したその言葉の意味が、今になってやっと解ったような、 そんな気がしたーーーーーーー
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「もう……駄目かもしれない……(泣)」
ツー、と、その頬を一筋の涙が伝った。
その涙は、直ぐ横に迫っているアスファルトに染みをつけるようにして、やがて後も残さず消えていった。
感覚を戻しつつある痛覚は、相変わらず自分に刺し殺す様な痛みを、容赦無く伝える。
その痛みを堪えるようにして、私こと雪平勝間は、アスファルトを、ただじっと見つめていた。
雪平勝間、18歳。只今、交通事故nowである。
何故こうなったのか、意味は特に無い。本当に只の事故だった。
……そう、僕がスピード違反の大型トラックに跳ねられて、意識さえ残っていなければ。
マジで、なんで意識が残っているのか自分でも解らない。
そんな今の自分でも分かることは、死にそうな位メッチャ痛いこと。
それだけであった。
騒ぎを聞き付けた周りの喧騒も、段々と広がりつつある。
「はは……。本当に付いてないな……僕」
周りの悲鳴や騒々しさに当てられたのか、これが最後の時なのだと思うと、自然と胸が痛くてしょうがなくなった。
ーーーーその時だった。
「ん~、やっぱりこの辺りは人の愛憎劇に満ちていて、何とも言えず最高だね~」
街道の向こうから、まるで誰にも道を拒まれることなく、書生さんの様な服装をした美青年が此方に近づいてきたのだ。
17、8歳くらいであろうか。
精緻な顔立ちをしており、整えることを知らないようなボサボサの頭髪を、無理やり帽子で押さえ込んでいる。
そんな彼が見えているのかいないのか、人が避けていった後、彼は、僕の前にゆっくりと屈んだ。
そして、一頻り顔を覗きこんで、見透かしたような、悟ったような目で僕に声を掛けてきた。
「おーい、君、君」
「え…?あ、はい…」
「お、返事は出来るのか。いや、中々のタフネスだよ。それより君、何処か悪いところは?」
「……いえ、体は凄く痛いですし……いえ、言うとすれば死にそうな位痛いですが、特に悪いところは……。というか、貴方は?」
聞きたかった事を聞くと、彼はそう聞かれることが分かっていたのか、ニヤリと口角を持ち上げて答えた。
「……僕はね、異能力者だよ」
「………………………………………………は?」
彼がさも真実の様に突拍子もなく言った言葉を理解するのに、頭が追い付かなかった。
というか、本当に何言ってんだこの人と、今自分が跳ねられていることも忘れて思ってしまった。
「信じてないんだね」
当たり前だろうと、勝間。
「僕はね、これでも結構凄いのだよ。ここにいる奴等を一瞬で消そうと思えば消せるし、時間を止めたり、簡単な治癒くらいなら出来るんだ!」
その態度がますます気に触ったのか、彼は色々言い始めた。
ーーーーーーーーーーーーそして、実行、した。
パチンと指を鳴らす。
すると、まるでブツッと電源を落としたテレビのように、騒がしかった辺りの喧騒がまるで嘘のように止まった。そう、周りの音すらも止まったのだ。
「僕の名は御影孔明」
そして、彼が僕の方に向かって指を鳴らすと、先程の事故があたかも無かったかのように、汚れた衣類、更には大分前からあった体の怪我すらも、一瞬にして消え去った。
「!?!?」
「異能力者さ」
自分が驚いている所を見て、さながら、悪戯が成功した子供のようにして、彼は優しく此方に微笑んだ。
これが、僕と、御影さんの、初めての出会いだったーーーーーーーー
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「……まえ…、……くん、……起き賜えよ、勝間くん」
「ん、んぅ……?」
ウトウトして、そのまま寝てしまっていたらしい。
顔を上げると、其処には、すっかり見慣れたが、相変わらずイケメンだとしみじみ思う御影さんの顔があった。
「さて、グッスリしていた所悪いが、任務だよ、勝間くん。少しでいい、急ぎ賜え」
「はい!」
ここは、世界最小にして世界最強の異能力組織、蒼炎。
御影さんの師匠をリーダーとする、《人の為》の組織だ。
今日も、僕はここで自分の意味を探すーーーーー
ーーーー白壁エルドラニクス、零話。
《邂逅、あるいは必然の出会い》終了
(話の中ではさも今の話のようですが、一応前の事です。紛らわしくてすいません)
頑張って書いてみようと思いますが、ご不明な点やアドバイスがありましたら、宜しくお願いします。