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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
第1章:闘う民と笑わない貴族
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8, 信頼

「スザンナ。」


 町を出る前にフェレスに挨拶をしようと思って学舎の門の前で待っていたら、フェレスが馬車に乗って出てきた。そして私に気づいて声をかけてくれた。


「フェレス。」

「どうしたんだ。」

「うん。もうここを発とうと思って。」

「……そうか。」

 フェレスは馬車の上から私を見下ろして目を細めた。

「フェレス。また会えたらいいなっ。」

「あぁ。」

「じゃ、またなっ。」

 手を振ろうとした時だった。その手がさっと掬い取られた。

「スザンナ。」

「うん?」

「お前は本当にいつも笑顔だな。」

「あはは。そうか?よく言われる。」

「いつまで旅を続けるんだ?」

「うーん。あと一ヵ月半かな。そしたら、アルブに帰るよ。」

「一ヵ月後。」

「うん?」

「俺は都に行く。」

「うん。」

「その時、お前、俺の護衛をしてくれないか。」


 フェレスの目の色は、不思議なエメラルドグリーンだった。その目に吸い込まれそうだ。


「護衛?」

「あぁ……信用できる者を側におきたい。旅の間だけでいい。」

「今の護衛は信用をおけないのか?」

「おいている。だけど、その旅の時だけは、いつもとは違う者なんだ。」

「……へー。」

 護衛に随分こだわるんだな、そう思った。

「何処から?」

「ブロイニュから。」

「見返りは?」

「十分。」

「……いいよ。」

 微笑んで頷いた。フェレスは無表情のままありがとうと言った。

「じゃあ、一ヶ月後、ブロイニュのポルヴィマーゴの塔の下で会おう。」

「うん。」

 了承した。

「じゃあな。」

「うん。フェレス。」


 フェレスは私の手を離して馬車を前に走らせた。フェレスが掴んでいた自分の指が妙に温かい。嬉しくて、一人、微笑んでしまった。フェレスが自分に信用をおいていると言ってくれた事が、すごく嬉しかったんだ。


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