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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
エピローグ
30/32

30, それから

 それから二十余年の歳月が経った。


「つかぬことを、お伺いしますが。」

 紅茶を出しながら伯爵の従者であるボードレーが尋ねた。

「ん?なんだいボードレー?」

 クシスがカップをに入れる砂糖をスプーンで掬いながら顔を上げる。

「もし、気を悪くされるようなら無視してください。」

「なんだい。じれったいな。」

 くすっと笑う。

「伯爵は、御兄様がいらっしゃったんですよね。」

「……あぁ、うん、いたよ。とても出来のいいのが。」

「伯爵と違って?」

「あはは、また君は辛辣だな。そうだね。本当に尊敬していた。誇り高くて、何をしても兄様には敵わなかったよ。」

「……いつお亡くなりに?」

「アルブ戦争の時だよ。」

「そうでしたか。」

 ボードレーは頭をさげて一歩下がった。

「あの諍いで、本当にたくさんのものが無くなってしまった。」

 クシスは遠くを見るような目で言った。

「父上も母上も、たくさんの民も、町の大半も。」

「……私はほんの赤子でした。」

「そうだね。憶えていまい。」

「でも、叔父上が死にました。」

「そうか……。残念だったね。」

「……伯爵。」

「ん?」

「憎んだり、したことはありますか?」

「……イルルを?」

 頷く。

「あるよ。今だってあんまり好きじゃない。」

「そうですか。」

「でもね。」

 紅茶を飲む。いい香りがする。

「それでも、泣きたくても泣けない人間が、今も笑ってるんだ。」

「はあ。」

「だったら、私も笑っていようと、そう思うんだよ。」

「……そうですか。」

 ボードレーは微笑んだ。

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