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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
第3章:大人になるということ
21/32

21, 再会

「勝者!」


 歓声が起こる。アルブの町の広場。腕だめしだ。


「譲ちゃん強いねぇ!どこの子?」

 手を引っ張られて問われる。

「バルガン。」

 息を切らしながら答える。腕だめしに挑戦して勝ったのだ。

「……あぁ!あの生粋の武民の町!」

「賞金は?」

「うんうん!ここに!さぁ受け取れ!名前は?」

「スザンナ。」

「よし!今夜の勝者はスザンナ!スザンナ!」

 手をさらに引っ張りあげられる。もう一度大きな歓声が聞こえた。



 布を織る仕事を辞めた。ピティの護衛と、この腕だめしで金を稼ぐと決めた。剣だけで生きていく事を決めた。私は武民だから。アルブの女だから。

 もうすぐ誕生日だ。もう16になる。早い。家族が亡くなってから、もう3年も経つ。それはフェレスに会わなくなってからの期間とほぼ等しい。


 だからその人の声がして、心底びっくりした。


「スザンナ。」


 信じられなくて思いっきり振り向いた。

 幻聴かと思ったのに、実際に彼はそこにいた。


「フェ、フェレス!?な……っなんでここに!」

 完全に想定外の出来事だった。夢かもしれない。

「今ピティにいるんだ。だから、腕試しでもと誘われて。」

「ど……どこから?」

「あの塔。あの塔は貴族たちの腕だめし見物スポットなんだ。」

「へ、へえ……。」


 フェレスが本当に此処にいると実感すると、思わず顔を背けてしまった。顔は笑ったまま、嫌な汗が出てる。どうしようもない。隠す術がないんだから。泥だらけの姿を。


「久しぶりだな。」

「うん。久しぶり。」

「こっち向けよ。」


 どきっとした。フェレスの声。こんなんだっけ?強い声だった。

 言われた通りにフェレスのほうを見た。


「ごめん。」

「なにが?」

「ごめん。会いに行くって言って、結局……全然、会いにいけなかったこと。」

「……あぁ。そんなことか。気にしてない。俺も会いにこれなかった。」


 どうしよう。真っ直ぐ見れない。理由はよくわからないが。ちょっと無理だ。


「あ。」

 話題を思いつく。

「成人、おめでとう。」

「知ってたのか?」

「あ、うん。皆が噂してて。そんで……。」

「それで?」

「……行ったんだけど。」

「サリーナ・マハリンに?」

「う、うん。」

「なんで訪ねなかった。」

「だって……っ!」


 そんなの。そんなの無理に決まってるだろ。


「あ……。そ、そう言えばさ。」

 言いかけた時、フェレスはいつものように私の手をすくい取っていた。

「やめ……!」


 それを引き抜こうとしたが、彼は手を離さなかった。まるで私が拒絶することを分かっていたかのように、初めから強い力で掴んでいた。


「来て。」

「何処に!」

「ピティ。せっかく会えたんだ。一緒に食事をしよう。」

「ちょっと待て!」

「なんでだ?」

「私がピティに行けるわけないだろっ。」

「俺がいるだろう。」

「そういうんじゃないよ!」

「じゃあなに。」

「なにって……。あ、あのさ。」

 俯く。顔が見れない。

「うん。」

「……結婚、したのか?」

「何の話だ?」

 フェレスはじっと私を見た。

「……してないの?」

「どこから聞いた話だ。俺は未婚だよ。」

「だって、いっぱい貴族の家が……。」

「してない。」

「……あ、そうなんだ。」


 てっきり、成人してすぐに誰かと婚約したんだと思い込んでいた。

 結婚相手に贈るはずの、成人の証の指輪をつけていなかったし。


「笑ったな。」

「は?」

「やっと笑ったな。行くぞ。」

「だ……、待ってってば!だって、私、こんな泥だらけ……。」

「服くらい見立ててやる。早くしてくれ。結構腹が減ってるんだ。」


 ああ……、いつものフェレスだ。口元が緩んでしまった。

 変わってない。変わってない。笑わない彼は相変わらず微笑みすらしない。だけどなんにも変わってなかった。

 どこか凍っていた心の奥が、コロンと音を立てた。そしてじわじわと溶けていくのを感じていた。

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