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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
第3章:大人になるということ
19/32

19, 2年ぶり

 サリーナ・マハリンまで、およそ丸1日。


「久しぶりだな、野宿。」


 森の中、いそいそと寝る準備を整えてふふっと笑う。

 懐かしい。一度旅をした時以来だ。

 空を見上げると美しい星空が見える。スピカが光る。青い石だ。

 だけどふいに家族の事も一緒に思い出す。私が村を出て、帰ってきた時には彼らはもう私を待ってはいなかった。冷たい体を土の中に埋めていた。じいさんは国の役人との戦いの中で深手を負って、母さんは伝染病に感染して、弟はその看病中に伝染病をもらって、あっけなく死んでしまったらしい。

 口がきゅっと閉じられる。


 だめだ。


 急いで微笑んだ。笑わなくてはならない。フェレスの言葉を思い出した。

 微笑んだら不思議と家族との楽しかった想い出が頭を廻った。


「……。本当に久しぶりだ。」


 呟き終わった瞬間、起き上がって剣を抜いていた。

 どかっ!と顔に痛みが走る。野盗だ。囲まれている。

 あぁ、身体がなまってるらしい。だけど、ぞくぞくと体を走るこの感覚。すぐに思い出す。体が戦い方を思い出す。


 賊は、ひぃふぅみ。……7人か。いい数字だ。


 ぷっと血を吐き出してから、跳んだ。



 翌朝。朝日と共に目を覚ます。


「うーん……。やっぱ、少しなまった。」


 コキっと首を鳴らす。体に残るちょっとのあざと筋肉痛。転がる野盗ども。目に灯る寝不足のだるさ。


「やばいな。ちょっと修行しよう。バイトだけじゃなまる。」


 筋肉を鍛えるくらいはずっと続けていたけれど、甘かったらしい。身体が戦う動きを忘れてる。それは実践でしか手に入らない動きだ。実践でしか感じられない感覚だ。


「よっと。」


 少し柔軟してから歩きだした。サリーナ・マハリンはもうすぐだ。今日が成人の儀式の日だ。遅れられない。なんとかして会いたい。


「大きくなってるだろうなぁ。」


 想像してみる。かれこれ2年程会ってないわけだから、きっともっと背が伸びてるだろう。肩幅とかも広くなって、手も大きくなっている。楽しみだ。ふふっと笑った。


「私も逞しくなったって言われたらいいな。」


 足取りはとても軽かった。


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