19, 2年ぶり
サリーナ・マハリンまで、およそ丸1日。
「久しぶりだな、野宿。」
森の中、いそいそと寝る準備を整えてふふっと笑う。
懐かしい。一度旅をした時以来だ。
空を見上げると美しい星空が見える。スピカが光る。青い石だ。
だけどふいに家族の事も一緒に思い出す。私が村を出て、帰ってきた時には彼らはもう私を待ってはいなかった。冷たい体を土の中に埋めていた。じいさんは国の役人との戦いの中で深手を負って、母さんは伝染病に感染して、弟はその看病中に伝染病をもらって、あっけなく死んでしまったらしい。
口がきゅっと閉じられる。
だめだ。
急いで微笑んだ。笑わなくてはならない。フェレスの言葉を思い出した。
微笑んだら不思議と家族との楽しかった想い出が頭を廻った。
「……。本当に久しぶりだ。」
呟き終わった瞬間、起き上がって剣を抜いていた。
どかっ!と顔に痛みが走る。野盗だ。囲まれている。
あぁ、身体がなまってるらしい。だけど、ぞくぞくと体を走るこの感覚。すぐに思い出す。体が戦い方を思い出す。
賊は、ひぃふぅみ。……7人か。いい数字だ。
ぷっと血を吐き出してから、跳んだ。
翌朝。朝日と共に目を覚ます。
「うーん……。やっぱ、少しなまった。」
コキっと首を鳴らす。体に残るちょっとのあざと筋肉痛。転がる野盗ども。目に灯る寝不足のだるさ。
「やばいな。ちょっと修行しよう。バイトだけじゃなまる。」
筋肉を鍛えるくらいはずっと続けていたけれど、甘かったらしい。身体が戦う動きを忘れてる。それは実践でしか手に入らない動きだ。実践でしか感じられない感覚だ。
「よっと。」
少し柔軟してから歩きだした。サリーナ・マハリンはもうすぐだ。今日が成人の儀式の日だ。遅れられない。なんとかして会いたい。
「大きくなってるだろうなぁ。」
想像してみる。かれこれ2年程会ってないわけだから、きっともっと背が伸びてるだろう。肩幅とかも広くなって、手も大きくなっている。楽しみだ。ふふっと笑った。
「私も逞しくなったって言われたらいいな。」
足取りはとても軽かった。