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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
第3章:大人になるということ
18/32

18, 成人

 とある午後のこと。仕事の休憩室でのことだ。


「え?」

「サリーナ・マハリンのアングランドファウスト家の長子が成人するんですって。」

「……それって、フェレス?」

「んー?確かそんな名前だったと思うけど。」


 仕事仲間のマリーがそう言って笑った。


「アングランドファウストっていったらアルブ南部でギロディスの次に権力もあって、由緒も正しくて、評判もいいじゃない?素敵ねぇその長子っ!お近づきになりたいわっ。」

「あはは。マリー、あんた彼氏いるでしょうに。泣くわよ、なんだっけあの人。」

「レーのことっ?やっだ、私もう別れたわよ、あんなんとはっ。」


 おしゃべりは続くが、フェレスのことが頭から離れなかった。

 成人するんだ、フェレス。


「……と、いっけない。私もう行かないとっ!次の仕事があるんだ。」

「スザンナっ、あんた働きすぎ。」

「大した仕事じゃないよっ。ただの警備。じゃーねっ!おつかれさまっ。」


 この頃、仕事を二つしていた。

 一つはこのアルブの町で布を織る仕事。もう一つはピティという迎賓用の大きなお屋敷の警備として。男の武民なら傭兵とかにもなれただろうけど、女の私があの村に留まって傭兵をする事は困難で、結局こういう仕事を選んだ。


 次の仕事場、ピティへと走りながら私はフェレスを思い出していた。確か彼とは同い年だった。だったら15歳で成人なんだ。遅いんだな、と思った。生粋の武民が早いだけだけど。

 きっと、そのお祝いは華やかだろうな。今どんな風になってるのかな。フェレス。懐かしい。早くも2年ほど会っていない。

 会いたいな、と強く思った。


「……よしっ。」


 そして私はフェレスの成人の儀式がある日の仕事を休ませてもらえるように頭を下げた。


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