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サリーナ・マハリン  作者: なのるほどのものではありません
第2章:約束
14/32

14, 別れ

 もう夜も深まり、そろそろ行こうかと壁に掛けられた時計を見ていたら、フェレスに声をかけられた。


「泊まらないのか?」


 振り向く。

「此処に?」

 フェレスは頷く。

「なに?おおっぴらに誘ってる?」

「違う。」

 あはは、と笑うが、フェレスは冗談にも笑ってくれない。

「いいよ。そこらへんで寝る。」

「……体冷やすなよ。最近は霧が出る。」

「うん。大丈夫。っていうか、ありがとうな。こんなに旅費。」

 お礼の旅費は子供が持つにはかなりの大金だった

「あぁ。この金で宿とって寝ろ。」

「うん。気が向いたら宿で寝るよ。月経痛が結構痛い時あるんだ。そういう時は宿のほうがいいからな。」

「…………そういうことは、軽々しく口にするなよ。」

「なんで。」

「……いい。」

 なんか呆れられた。

「じゃ。いくな。また、会おう。フェレス。」

「……あぁ。」

 笑った。もちろん、笑い返してくれることは期待してない。

 だから手を差し出した。いい匂いのする石鹸で洗ったからもう血の匂いとかしないし。

 フェレスは温かい掌で差し出した手をすくい取ってくれた。そして、こっちをじっと見て言う。


「ありがとう、スザンナ。絶対に、薬。持って行ってやる。」

「……うんっ。待ってる。待ってるよフェレス。」


 ぎゅっと彼の掌をもう一度強く握り閉めて、するりと指を解いた。その手を振って背をむけ、私は真っ直ぐこの大きな建物から出た。

 その日の空は、満天だった。


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