0111
he talks as if he knew everything about that.
(彼は、まるでアレのことは何でも知っているかのように話します)
【5(side by teacher)】
教師は久しぶりに友のマンションを訪ねていた。
期間としては、家族が出来て以来だ。
玄関のチャイムを鳴らした。
ピーンポーン
「はい」
中から出てきたのは中肉中背の男。
まごうことなく、教師の友だ。
「邪魔する」
「どーぞ」
大した言葉も交わさず、友の家に上がる。
その雰囲気は、昔のままで、教師に懐かしさを思い出させた。
「悪いな、気が利いたものが出せなくて」
戻ってきた友は言う。
その顔も、いつ以来か。
「なに、お互い下戸なんだ。つまみだけ齧っていればいいさ」
私は言う。
お互い席に着き、机に先ほどコンビニで買ってきたスルメと炭酸飲料を取り出す。
友はその間にテレビを付け、流れるバラエティ番組を暫く二人で黙々と見ていた。
そして、ニュースに切り替わって少し後、友は問う。
「どうしたんだい、今日は?」
「……」
私は直ぐに答えられない。
暫くして
「最近は物騒だ。君の学校の生徒も被害にあっていたな」
「ああ……全くふざけた話だ」
買ってきた500mlの炭酸飲料を飲み干す。
ふっと一息ついて続ける。
「人が1人ばらばらにされたってのに、地元メディアは騒がない。学校側もだんまりだ」
「そうか、それは余程鬱憤がたまると見た」
「ああ……すまない、愚痴るつもりは無かったんだ」
いいさ、と友は続けた。
そして
「オレがIUTASに勤めていることは覚えているかい?」
唐突にそう話してきた。
覚えているかと聞かれたが、
忘れるはずがない。
何せ、お互い内定が届いたときは、朝まで騒いだものだ。
だが、思い返せばそれきりか、友と会ったのは。
その後、メールやSNSで幾らかやり取りはしていたが、顔は合わせていない。
「少し馬鹿げた話かもしれないが聞いてくれ」
「……あ、ああ」
少し意識が飛んでいたようだ。
咄嗟に私は答える。
「実は最近この町で起きている暴力事件や、殺人事件は、IUTASが関係しているんだ」
「何?」
私は驚いて問い返す。
すると、友人はテレビの画面を指さして
「今やっているニュースの、社長が奥さんを殺したって話もそうだろう」
「何故そう言える?」
私はさらに問う。
「いや、オレは関与していないが、本社の中で、極秘のプロジェクトがあってだな……」
そこで、友は言葉を切ってしまう。
まるで、何かに耐えるように唇を噛んで。
「その、極秘の内容は?」
「知れば君にも被害が出るかもしれない……」
友はまだ悩んでいる様子だ。
そこで私は、ある真実を話そうと決めた。
「気にするな、もう出ている」
「え⁉」
友は本当に予期していなかったのだろう。
顔には不安と心配の文字が浮かんでいた。
友の優しさに感謝しつつ続ける。
「脅迫文がメールで送られてきた。ある生徒の成績を操作しなければ、息子を……」
「で、どうなった?」
友は焦った様子で叫ぶように言う。
「ああ、今は息子は入院していて、命に別状はない」
「そうか……間違いない、それは此方の責任だ」
友は頭を畳にこすりつける。
orzの姿勢だ。
友にいつまでもこの体勢でいてもらう訳にはいかない。
私は急いで次の言葉を紡ぐ。
「お前が私に誤っても仕方がないだろう? それより教えてくれ」
一呼吸置いた。
「極秘プロジェクトの内容を」