0011
this was too difficult for us to understand.
(これはあまりに難しすぎて、私たちには理解できなかった)
【3】
女の顔が、暗闇の中から蕭条に浮かぶ。
だが、女はしたり顔でもあった。
「ヒトって本当に曇鸞……三大欲求って謙遜しすぎじゃん」
スマホの画面に映る文字列を視て、そう呟いた。
勿論独り言だ。
黒のカーテンで外界から隔離された部屋で、
明かりなしに画面をのぞき込むといういつもの我々……彼女だ。
そして、彼女は奇矯さを自身で理解している。
嗚呼、やっぱりおかしいんだと。
周りの友人だったヒトからも、散々に言われていた。
「根暗、性悪女」「陰キャ」「ヲタ」「何考えてんのかわかんない」
寧ろ、彼女からすれば、同級生の彼らの方が不思議だった。
何故ワカラナイ?
何故ムレル?
何故ムシスル?
何故ケルノ、ナグルノ?
何故オカスノ?
何故……
これは復讐。
彼女を認めなかったヒト、社会への反抗。
スマホのスワイプ音だけが部屋に響く。
彼女はしゃべらない。
認めない。
怒るのを止めない。
今日も彼女は悪意を広める。
いや、腑に落ちない世界への聖戦だ。
ふと、画面が暗くなる。
STAMINAモードに変わったようだ。
さて、充電器は何処だったか。
がさごそと部屋の魔窟を漁る。
最近のスマホと言うのは、軽量化、高性能化に加え、
充電容量が馬鹿みたいに多い。
これは、内臓データが全てオンライン上に展開され、
本体は文字通り電池と画面、CPUのほぼ三つだ。
その中でも電池が大多数を絞める。
そのため、逆に充電を忘れるのだ。
「あ、あった」
見つけた。
さて、次はコンセントを掘り起こさねば。
まだ充電は出来ない……
【01】
彼は声を掛けられたのに気づかなかった。
なにせそこは騒音のたまり場、ゲームセンター。
音ゲー、アーケード、レース、コイン、キャッチャーetc……
狭い空間にこれだけ詰められていれば仕方のない話だ。
だから、肩を叩かれて初めて気が付いたのだった。
「やぁ」
鷹揚とした態度でこちらに冷たい笑みを浮かべ、そいつは話しかけてきた。
見た目彼の少し下くらいだろう。
「な、なんのようでしゅか……」
盛大にかんだ。
彼はチキンで臆病なので許してあげて欲しい。
「別に用という訳じゃないけど、どいてくれない?」
「え……」
思えばスマホを手にずっと熟考していたのだ。
邪魔だろう。
「し、しつれいしました」
多少どもりながらもその場を後にする。
チラリと後ろを見れば、そいつは太鼓のゲームに素晴らしい手さばきで挑んでいた。
バチ4本を器用に使い。
どうやってもっているかは気になるが……
正直この場にいるのは辛いので、店を出ることにする。
それに、彼の予想だと、そろそろスタミナが回復してソシャゲが出来るだろう。
メールの件もあるし、近くの公園にでも行くことにした。
まだまだ彼の休日は続く。