第七話
「……来るみたいやな。トゥラーシュは下がるんやで?」
「う、うん」
クリムは狼の耳をぴくぴくと動かして矢をつがえると…なにもないところへと解き放った。
「ギャア!」
矢に直撃した魔物が地に倒れ伏すと、ぞろぞろ狼型の魔物がでてきた。
「やれやれ……使い魔か」
「おおかたトゥラーシュが旅立つことを知ったんやろうな」
ドラグーンが拳を鳴らしながら言うとクリムはけたけたと笑いながら弓を戻す。
「うじゃうじゃと…こいつらはしつこいですね」
「まあ、そう言わないの」
「そうそう、早く倒しちゃおうぜ」
ミレイはマスケットを使い、雷の弾を装填して…相手めがけて放ち、それを横目に見ながらフォルとレリギアは剣を使い、順当に滅していく。
ミレイは盗賊に錬金術の使い手で錬金銃で戦う兎の獣人なのだ。
「……」
「悲しむ必要はないのじゃ…トゥラーシュ」
「そうだよ、悪いのはトゥラーシュを狙う奴なんだからね!」
離れた場所で俯くトゥラーシュに励ますように声をかけるハズキとユイーカ。
クリム達が前線で戦う間はトゥラーシュのそばにいることにしているのだ。
「なぁ、狙うってどういうことだ?ただ、あいつらが襲ってきたのは偶然じゃないのか?」
「わたしもそれが気になっていたんだけど」
同じく護衛としてそばにいるルナとハデスが不思議そうな様子で尋ねる。
ユイーカとハズキは顔を見合わせてからトゥラーシュを見ると覚悟を決めたように
「狙われるのはトゥラーシュが特別じゃからじゃ」
「特別?」
ユイーカの答えに聞き返すルナ。
「うん…トゥラーシュの家系は歌で魔術をしようできるものなんだ。 例えば歌で元気にできたり心を鎮めたりなど、色々な使い道ができるの」
「それじゃから、トゥラーシュは狙われるのじゃ」
ハズキとユイーカは俯いたままのトゥラーシュの頭を撫でて説明しだす。
『昔、聞いたことあるのじゃ、そういった特別な家系をもつものがたまに生まれると』
「カグちゃん、戦闘は終わったの?」
のそのそとこちらに歩いてくるカグツチにハズキが声をかける。
『うむ、主達が奮闘したから…それほど手間はかからなかったのじゃ』
「ところで…トゥラーシュのこと説明していたのか?」
頷くカグツチが答えるとドラグーンがトゥラーシュを抱っこして頬をつんつんしながらハズキ達に問いかける。トゥラーシュはじたじたとくすぐったそうに暴れている。
「うん、ルナ達は知らないだろうからね」
「それで…先ほどのは使い魔じゃったか?」
ハズキが肯定し、ユイーカがドラグーンに問いかけると
「あぁ…首輪がついていたからな」
「お兄ちゃん、おろして!」
ドラグーンが悲しそうに頷くとトゥラーシュがそう言った。
「歌って浄化するつもりなん?それやと、場所を教えるもんやで」
「…でも…このままなのは可哀想だよ…好きでここにきたんじゃないのに…」
クリムがトゥラーシュを見て言うとトゥラーシュは悲しげに辛そうに告げる。