第四話 ルナたちとの出会い
傍観していたシュウヤは思い出していたルナ達との出会いを……。
それはトゥラーシュ達が幼い頃のことだった。
「ゼメキスさん!大変です!村の外で男女が倒れて」
「む、わかった。 案内せい!」
仲良く噴水の前で会話していると、
そこへ男性が近寄ってきて焦った様子で告げるのでそのまま急いで村の外に向かった。
茫然と見送るトゥラーシュ達。
「とりあえず、追いかけようかえ?」
「そうじゃのう、何者か気になるところじゃし」
クリムがそう言うとユイーカが賛同して、走っていく。
その後をハズキが「まって!お母さん!」と言い、慌てて追いかけていく。
「あれ?フォルくんは?」
「先に見に行ってるそうだ」
トゥラーシュの疑問にレリギアが疲れた様子で答えた。
苦労症という称号をレリギアは手に入れた!
「今、すっごく変な称号をつけられたような」
「気のせいやろ」
「気のせいですよ」
「気のせい!」
レリギアが呟くとクリム・シュウヤ・ソラが笑顔で言う。
そうかなぁといまだに納得できないレリギアの背中を押してトゥラーシュ達は村の外へと向かう。
「まあ、行こうぜ」
「そうだね、お兄ちゃん」
肩に載せてもらうと嬉しそうに笑うトゥラーシュ。
幼いころからの付き合いなため、こういうこともよくある。
村の外に着くと、2人の男女が倒れていた。
見たこともない装備に警戒していると
「彼らは異界迷子かしら?」
「異界迷子?」
トゥラーシュが不思議そうに聞き返すと
「簡単にいうと異界に紛れ込んでこの世界に落ちてくる者のことを言うのよ」
にこにこ笑顔でトゥラーシュ達に説明するが…フォルだけは腕を組んだままでいた。
彼には分からなかったようだ。
「どうしてそう思うんですか?」
「簡単よ、彼らの服装ね。見たことないでしょ?」
薬師であるプレセアの質問に笑顔でそう答える。
確かに装備はこことは違う材質で出来ているようだった。
「とりあえず、運ぶとするかのう」
「そうですね」
リラとユイーカは頷くと空を見上げて何か伝えると、ふわりと倒れている男女を浮きあげて村の中へと運び出す。
普通に人には見えないが、魔力がある人間やエルフやダークエルフなどなら見える仕組みである。
ちなみにフェル(妖精)とフォル(精霊)は似ているようで少し違う所がある。
詳しいことは後ほど説明するとしよう。
シュウヤの家まで運ばれるとベッドに2人の男女を寝かした。
「ありがとうね」
「また、頼むな」
リラとユイーカは精霊にお礼を告げると向き直る。
「綺麗な人達だね?」
「そうだね…でも…どうして…村の外で倒れていたんだろう?」
トゥラーシュが呟くとシュウヤが疑問をもつ。
誰もがそのことに疑問をもっていた…その時だ。
「「ん…」」
眠っていた2人が目をあけたのが見えた。
ちなみに隣同士に寝かせてあるのだ。
「あ、もう…大丈夫ですか?」
トゥラーシュが近寄り、笑顔で尋ねると……。
「ああ、大丈夫だよ」
「わたしも、大丈……」
漆黒の髪に藍色の瞳の男性の方は笑顔で答えて茶色の髪で二つのお団子に睡蓮の花の髪飾り 後ろ髪を伸ばしている女性も笑顔でこたえようとしたらトゥラーシュを見て硬直した。
それも笑顔のままで
「?あの…どうしま」
「か…」
トゥラーシュが不思議そうな様子で小首をかしげると
「か?(きょとん」
「かんわいいぃいぃいぃぃ!!!」
女性が突然叫んでトゥラーシュは抱きしめられた。
コンマ1秒にもみたないくらいの速さだったとか。
「ふえぇぇぇぇえ!!?」
「可愛いよ可愛いすぎるよぅ!ハデス、この子お持ち帰りしちゃだめかな?」
「ルナ、ダメに決まってるだろう(汗)」
驚くトゥラーシュに頬ずりしてる女性が目をキラキラさせて男性に声をかける。
男性が呆れながら女性からトゥラーシュを離そうとするが、なかなか離れない。
「さぁ、着せ替えしようね~♪」
「ひゃあああ!!?ちょ、ちょっと待って~!!」
トゥラーシュの服を剥ぎながら言うとトゥラーシュが焦りながら止める。
「「「「……着替え…(ごく」」」」
その光景をフォル・レリギア・シュウヤとハデスと呼ばれた男性陣がまじまじと見ようとしていたら。
「あんさん等は見たらあかん!」
「もし、見たら…ドラグーンにしばかれるよ!」
そう言いながらフォル達に毛布をかぶせて視界をふさぐクリム達がいた。
「お前ら、覚悟はできてるな?」
「手伝うぞ、ドラグーン」
拳を鳴らすドラグーンとエクゼ。
同じ龍の血を引いているので仲が良いのだろう。
「「前が見えない!?」」
「ドラグーンにしばかれるのは嫌だぁぁぁぁぁっ!!」
「落ち着いて!シュウヤくん!」
もぞもぞと動くフォルとレリギアが呟いているとシュウヤだけがパニックを起こしていた。
そんなシュウヤをなだめるように肩をゆらすシェフィル。
どうやらなにかのトラウマが発動したようだ。
「ハデス、浮気する気?」
「あ、いや!これは男の本能であってけして浮気というわけじゃ!」
どす黒いオーラをだしているルナと呼ばれた女性に慌てて言い分けをしている。
ぼきぼきと拳を鳴らしている辺りが恐怖に満ちている。
「問答無用!」
「そんな、理不…げふっ!」
問答無用でかかと落としをくらわされて叫ぶと直撃して気絶するハデス。
誰もが思うだろう、理不尽だと。
「大丈夫かえ?」
「うぅ…なんで…いきなり脱がされないといけないんだろう」
クリムに服を着せてもらいながら涙目になっているトゥラーシュ。
ちなみにクリムによって白のゴスロリ服を着せられていることに気づかないままなのはいうまでもない。
サイズはなぜかトゥラーシュにぴったりで違和感もない。
「トゥラーシュ、よく似合っておる」
「そうだね~♪可愛いよ」
「え?」
ユイーカとハズキが笑顔でほめるとトゥラーシュが不思議そうに首をかしげた。
そんなトゥラーシュに鏡を見せると
「ふ、ふえぇぇぇぇぇ!!!?なに、これえぇぇぇ!!」
驚愕の声をあげたのだった。
「やっぱり似合うわね~♪」
「絵師にかいてもらうか」
ルナとクリムとドラグーンはどこか満足げに笑みを見せていた。
この3人はにこにこ笑顔で見つめているようだ。
いつのまにか呼ばれた絵師のひとがかきとめていた。
「できれば、その絵僕にも///」
『シュウヤも絵をお願いしたら?』
シュウヤが恥ずかしげにクリム達に頼むとソラが呆れた様子で言った。
ごもっともである。
「だって…ああいう服着たトゥラーシュも可愛いからまぶしくて直視が」
頬を赤らめるシュウヤを見て全員(トゥラーシュを除いた)が思ったこと、それは「ヘタレ」だった。
そんなシュウヤにヘタレという称号がつけられたのはいうまでもないだろう。
「そうだわ!トゥラーシュのステージ衣装も考えないとねえ」
「あ、なんでしたら私も手伝いますよ!」
トゥラーシュの母がこの光景に動じた用もなく呟くとルナが目をキラキラさせて手をあげる。
ハデスはいまだに気絶しているようだ。
「あら、ありがとう♪お願いね」
「はい!」
にこにこ笑顔で衣装がある部屋に2人で向かうのだった。
「なんだよ、このメンツで真面目なのは俺だけかよ」
「フォルのどこが真面目なんだよ。寝言は寝てから言えよな」
やれやれと呟くとレリギアがぼそっと言うと
「なんだと!?」
「やるか!?」
にらみ合いになってしまった。
「ここで口論するんなら、この絵はプレゼントせんえ」
「さて、どうするのじゃ?喧嘩をするか…絵を取るか」
クリムとユイーカがにっこりと笑って一枚の絵を見せた。
現像もすでに済ましていたのか。
「「喧嘩はしません!」」
びしっと敬礼するフォルとレリギア。
どこか軍隊ふうなのは気のせいだろうか。
「う…うぅ」
「……大丈夫か?」
ハデスが目を覚ますとコーイチが尋ねた。
ゆっくりと身を起こしてキョロキョロと周りを見てから
「なんとかな、久しぶりにくらったわけじゃねーのに。今回はするどかったなぁ」
「毎回くらってるの!?」
首をコキコキと鳴らすハデスにシェフィルがツッコミをいれていた。
「どうしたの、シェフィルちゃん」
「シェフィル?」
シュウヤとトゥラーシュがコーイチの声に不思議に思って近寄ってきた。
ちなみにトゥラーシュはすでにゴスロリの服を脱いでおり、普通の浴衣ドレスを着ている。
「いや、なんでもないよ。ちょっと…このひとの日常に疑問を思っただけだし」
「?よくわからないけど、お疲れ」
「お疲れはいらないと思うけど。とりあえず、紅茶でも飲む?」
苦笑いを浮かべるシェフィルにシュウヤが労わるとトゥラーシュが小首を傾げて尋ねた。
「そうだね、頼めるかな?」
「うん、待っててね!」
シェフィルが笑顔で頼むとトゥラーシュは笑顔でキッチンに向かった。