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第一話 旅立ちの前

村の中央に立つ神殿は多くの村人達で賑わっていた。

夜の祝祭によるパーティに向けて準備が進められていた。

先に到着したメンバーは準備を手伝っている。

トゥラーシュ以外は村の中央に立つ神殿で、祝祭パーティの準備をしていた。

神殿の規模はそれほど大きくはなく、ちょっと大きな家程度のようだ。

そこにパーティー用のテーブルを運んだり、飾り付けなどをしている。

神殿の入口は開け放たれていて、礼拝堂を中心に村人達がどたばたと出入りしていた。

夜に行われるパーティの準備で大忙しのようだ。

ルーティとクリムは飾り付けを結びつけているようだ。

他のみんなもそれぞれせわしなく動いている中、トゥラーシュは居所がなさそうにきょろきょろしていたが立ち上がる。

そのそばにはソラとルイセがいたりするが気にしないでおこう。


「あ、あたしもやっぱり手伝いますっ! なにかできることがあるかも」

「こら~! アンタは主賓なんだから、じっとして座っていればいいんだよ」

「そうじゃぞ、トゥラーシュ。 これも旅に出れるお祝いみたいなものなんじゃから」


準備を手伝おうとするとユイーカとハズキに止められた。

特徴的なポニーテールが尻尾みたいにふりふり揺らしている。


「は、はい……なんか恐縮しちゃいますけど……」


落ち着かないので周囲をキョロキョロと見渡す。


「寂しい?」

「そりゃあ……寂しいです。 生まれてきて以来、ずっとこの村でみんなと一緒に暮らしてきましたから」

「じゃが、永遠の別れというわけではなかろう。 たまには帰ってくればよいのじゃ」


ハズキに問いかけられて答えるトゥラーシュにユイーカはそう告げた。


『ユイーカの言う通りなのじゃ』

『そうだよ、トゥラーシュ♪』

『どういけーん☆』


カグツチとルイセとソラが尾を揺らしながら笑っていた。


「そんなにキョロキョロして、どうした?」

「お兄ちゃん……」


そんな彼女の頭を優しく撫でる大きな手に気づく。

そして見上げると彼女にとって血のつながりのある兄貴がいた。

身の丈ニメートル程の筋骨隆々な男で黒い短髪に後ろ髪を腰まで伸ばして首の後ろで結び、黒い着物に白い袴を履き左右の腰に二本の刀を括り付けていた。

見る者が見れば男の格好が東方の国のサムライの服装だと解るだろう。

彼を良く見ると耳が尖っているため、男がエルフかハーフエルフの種族だという事が解る。

解るのだが、恐らくは誰も信じないだろう。

何故なら彼はエルフやハーフエルフにしてはがっしりし過ぎているからだ。


『落ち着かないかもしれぬが、主賓はおとなしくしておるのじゃ』

「それはお兄ちゃんとカグツチもそうでしょ?」


そんな彼に寄り添うようにいる赤毛の虎を見て頬を膨らませるトゥラーシュ。

この虎は炎虎と呼ばれており、フォルという精霊の中で獣型の精霊獣という種類に属している。

そんな虎の名前をカグツチといい、300年ほど生きる年長者なのだとか。

村の人からの依頼の為に買い出しにいった時に出会い、それから気に入られて主従の契約を交わしたらしい。

ちなみにカグツチが抜けた後はカグツチの次に生きている炎虎が長をしているらしい。

そう、この村の人達は精霊獣に加護を与えられた彼を祝うために準備をしているのだ。


「でも、そんなに落ち着かない態度しても意味ないだろ? やましいことなんてないんだから、胸をはれよ」

『うむうむ、トゥラーシュの歌を聞きたいというのもあるじゃろうしな』

「あうあう、祝祭の度に歌をお願いされるのは慣れないよ」


ドラグーンとカグツチに諭されると恥ずかしそうにうつむいてしまうトゥラーシュ。


「や、やっぱり手伝いに」

「トゥラーシュはそこに座ってるんや!」

「そうだよ、主賓なんだからね。 トゥラーシュは特にどんと構えてなきゃ

ほら、ドラグーンのようにさ」


再び立ち上がろうとするトゥラーシュをクリムとシュウヤが止める。


「で、でも……」

「いいから、座ってる!」


ハズキも加勢するように止める。


「は、はい……」


渋々と椅子に座りなおすトゥラーシュ。

それを見てドラグーンは苦笑を浮かべている。


「落ち着かないのなら、いっちょ景気づけに、歌ったらどうかな?」


そこへドワーフのシェフィルが近寄ってきて声をかけた。


「シェフィルちゃん、飾り付けはひと段落したんだね」

「うん、それに暗いままなのはよくないよ? これから、どんどん祝祭の日に呼ばれるはめになるんだからね!」


視線を向けると同じように小さなドワーフの少女を見て言うと彼女は笑いながら言った。

そう、彼女はこれからドラグーンと一緒に世界を周り、冒険者として動き、それと同時に歌で励ます為の旅になるのだ。

シェフィルに苦笑いしつつトゥラーシュは歌いだす。


「~♪」


透き通るような美しい声に、村人達も手を止めて、彼女の歌に耳を傾ける。

感想お待ちしておるんでありんす。

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